人手不足が深刻化している。直近データである3月分の有効求人倍率は1.59倍と未だ高い水準を維持している。少子高齢化による生産年齢人口の減少、特に近年は団塊の世代の労働市場からの退出によって求人倍率の分母である求職者数の減少が顕著である。
これに加え、世界経済の回復に伴う国内景気の回復や設備投資循環による内需回復の中で求人数も増大傾向だ。オリンピックが近い建設業界では躯体工事関係の有効求人倍率は10倍を超えており、特に深刻な人手不足の状況だ。既に、企業倒産総数は低水準で推移しているにもかかわらず、中小企業を中心に人手不足を事由とした労務倒産が増加しているようだ。
10日、東京商工リサーチが4月の「人手不足」関連倒産調査結果を発表した。現況では、人手不足関連の倒産は経営者の高齢化などによる後継者難型が中心で推移している。しかし、人手不足感が深刻化する中で求人難型の倒産が今年に入って最多の8件発生しており、今後人手不足を背景にした求人難型の倒産が増加するのではないか動向が注目される。
4月の人手不足関連の倒産は全部で30件発生し、前年同月は22件で、伸び率は36.3%の増加となっている。内訳を見ると、代表者や幹部役員の死亡、引退などによる後継者難型が20件で前年同月はと比べ2件の増加、人手確保が困難で事業継続困難となった求人難型が8件で前年と比べ7件の増加、中核社員の独立、転職などの退職で事業継続困難となった従業員退職型が2件で前年と同数となっている。なお、賃金等の人件費の増大によって収益が悪化した人件費高騰型は該当がない。
産業別に見ると、サービス業他が8件で前年同月比3件の増加、卸売業が8件で同6件の増加、製造業は5件で同3件の増加、建設業が4件で同1件の減少、小売業が3件で同1件増加という順になっている。
地域別には、関東が13件で前年同月比2件の増加、九州は5件で同4件の増加、中部は4件で同2件の増加、近畿が3件で同1件増加、北海道は2件で同1件の減少、中国が2件で前年と同数、東北は1件で同1件の増加という順になっている。都道府県別に見ると、最多は東京都の7件で前年同月と比べ4件増加し、次いで愛知県の4件で同4件の増加という順になっている。(編集担当:久保田雄城)