パソコンの普及とともに、一般的に広く知られるようになった、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)は、今やパソコンには必要不可欠なものだ。USBはいうまでもなく、マウスやキーボード、モデムやプリンタなどの周辺機器とパソコンを結ぶデータ伝送路の規格のひとつだが、データのやりとりだけでなく、USBの給電能力を利用してコンセント代わりに使うこともでき、それを利用したグッズ、いわゆる「USB家電」も人気を集めている。
USB家電の草分け的なものの一つが、夏になると登場するUSBファン。オフィスなどでも根強い人気を誇る商品だ。また、最近では、忙しい朝に寝ぐせ直しで活躍しそうな「USB加湿ヘアブラシ」や、冷え性の人に喜ばれそうな「USBあったか腹巻」、缶ジュースが2缶収納できる「パーソナル温冷保温機」、少し前にブレイクした「おにぎりウォーマー」や「あったか弁当ポーチ」などなど、一見冗談のようなものから超便利なアイデアグッズまで、様々なUSB家電が登場している。
しかし、USB家電の大きなネックは、給電できるといっても、その電力は限られているということ。もともと、マウスやキーボードといった小電力で駆動する周辺機器に接続するためのものなので、安全面なども考慮して、供給電圧は5V (±10%)、最大電流は、ローパワーデバイスは100mA、ハイパワーデバイスは500mA(USB2.0)・900mA(USB3.0)間とされている。とくに小型のノートPCなどでは、電力供給が抑えられているものもあり、USB機器の動作が不安定になったという経験に覚えのある方も多いだろう。
ところが昨年、USB規格を策定する「USB 3.0 Promoter Group」が、USB端子で最大100Wを給電できる規格「USB Power Delivery Specification(USB PD)」の策定完了を発表して話題となっている。
USB PDの優れている点は、給電方向を変えることができるところだ。例えば、USB PD対応の機器にPCをUSB接続して使用した場合、機器側が一般電源につながっているときは、機器からPCに給電でき、またPCが電源につながっているときや電源自体がない場合は、PC側のバッテリーからディスプレイに給電するといったことも可能なになるのだ。
これが実現すれば、これまではUSB給電が難しかったような電化製品、たとえば大型のディスプレイなどへの電力供給も可能になる。今まで「グッズ」的な小物しか扱えなかったUSB家電も、本格的な製品が続々と登場してくることになるだろう。(編集担当:樋口隆)