昨年は、大型水族館のオープンやリニューアルが相次ぎ、注目されていた。3月14日にオープンした『京都水族館』は京都市初の本格的な水族館であり、日本初の内陸型大規模水族館として大きな話題をさらい、また5月22日には東京スカイツリーのふもとに位置する都市型水族館『すみだ水族館』は、日本の新たなランドマークとともに、大きな注目を浴びていた。どちらも「総合エデュテインメント型施設」として、現在も休日には1万人を越える多くの来場者が訪れている。
この2つの水族館を開業するのはオリックス不動産。いきものの種類の多さやコンセプトのオリジナリティも秀逸だが、ハード面として注目されたのが「水族館業務全体のシステム化」。例えばチケットカウンターやショップ・カフェなどのフロントオフィス、そして団体予約受付・現場運営・経理といったバックオフィス。それぞれの業務をシステムで有機的につなぐことにより業務を効率化し、事業分析にも活用。なかでも販売管理においては、一度データを入力すればそのまま会計システムへ連携でき、毎日膨大な量の売上実績データを自動連携できる“ワンライティングシステム”を導入している。これは集客施設の料金体系は通常料金に加え、団体割引、年間パスポート、さらにはコンビニエンスストア・鉄道・バス・ホテルとの提携割引プランなど対応が多岐に渡っているのが特徴。入力の手間は最低限に抑え、また経営分析に役立てるため、2つの施設の販売管理を同一基盤上で行うことも画期的な取り組みであったという。
このシステム構築を担当したのはパナソニック インフォメーションシステムズ。チケット発券、団体予約や財務会計などの各システムをEAIで柔軟につなぐ構成を設計。データ連携ミドルウェア「ASTERIA」を活用することで、高い連携性を実現したという。“ワンライティングシステム”を実現するために「ASTERIA」が担った役割は2つ。1つは、販売管理の各システムに存在するマスタデータを同期させること。もう1つは、チケット発券システムやレジシステムで毎日処理される売上・在庫データを、会計システムへ連携することだったという。
また2月15日、三井物産<8031>、カメイ<8037>、横浜八景島、ユアテック<1934>、河北新報社、仙台三越の6社は、雄大な東北の海と癒しの空間を再現する東北地域で最大級の仙台水族館(仮称)を2015年春の開業を目指すと発表した。
関係6社は宮城県仙台市での新たな水族館の設置に向けて新会社を共同で設立することに合意し契約を締結。新会社は今後、『仙台水族館(仮称)』が、新たな復興のシンボルの1つとなり、東北地域の観光資源としても、地域経済の活性化に貢献できるよう本事業に取り組むという。
各企業の役割として三井物産は、総合力を発揮するとともに、これまで培ってきた地元企業とのネットワークを活用し、パブリックビジネスを通じて地域経済の活性化に向けた事業を創出。カメイは、地域社会の一員として、癒しと学びの場を提供する本プロジェクトへ参画することにより、引き続き被災地の復興と地域社会の活性化を行う。横浜八景島は、横浜・八景島シーパラダイスの経営により培った水族館・レジャー業のノウハウを発揮し、地域に愛され共に歩む「復興を象徴する水族館」を運営することで、東北復興支援と地域活性化に寄与する。またユアテックは、総合設備エンジニアリング企業としての強みを活かしながら、被災地の復興に資するとともに本事業への参画を通じ、地域社会の発展に貢献。河北新報は、水族館の楽しさ、教育的機能を広く伝えるほか、さまざまなイベントを企画して、被災した沿岸部の活性化を行う。そして仙台三越は、地域復興と発展、そして将来を担っていく子供達のために、本年創業80周年の記念事業の一環として本事業に参画し、地域に密着した小売業の視点から本事業をバックアップしていくという。
現在、娯楽施設でもあり教育施設でもある水族館は国内に大小約70程度あるといわれている。いまや日本は人口当たりの水族館の数で考えると世界一とも言われ、水族館王国といっても過言ではない状態だ。ここ数年、遊園地などのアミューズメント施設が飽和状態であるため、前述の『京都水族館』や『すみだ水族館』をはじめ、大阪の『海遊館』や『沖縄美ら海水族館』など安定した動員力を誇る水族館を、復興のシンボルとして建設することは、被災地の経済の活況につながるとの期待も大きい。(編集担当:宮園奈美)