IoTの広がりとともに、センサ市場が爆発的に伸びている。富士キメラ総研の予測では、世界のセンサ市場は2020年度には5兆9755億円にまで成長すると見込んでいるが、これは2015年度と比べて18.4%もの増加となる。しかし、市場の成長以上に気になるなのは、日系企業がその渦中で現在、どれほどの存在感を持っているかだ。その点、日本企業にとってセンサはかなり水が合っている分野だといえるだろう。実際、電子情報技術産業協会(JEITA)の調査でも世界のセンサ市場における日系企業のシェアは50%を超えており、かなりの存在感を有していることがわかる。
そもそもセンサとは、機器にとっての五感のようなものだ。しかも、同じ「温度」を測ること一つをとってみても、その対象が固体であるのか、液体であるのか、はたまた気体なのかで計測方法はまったく違うし、要素技術も異なる。計測個所の周辺状況などによっても細かな配慮や条件が必要となる。こういった非常に複雑で繊細な分野において、日本のモノづくり企業の右に出る者はない。
日本の有名企業としては、電気メーカーや一般機械メーカーが一事業部として専門的なセンサを開発して成功しているケースが増えている。
例えば、ソニー〈6758〉は裏面照射型CMOSイメージセンサの開発に成功したことで、イメージセンサの分野では他の追随を許さない立場を築いた。人の眼をも超越するといわれるほど、ソニー製のCMOSイメージセンサの性能は高く、スマホやデジタルカメラなどはもちろん、産業機器や車載などのあらゆる分野にも活用の幅が広がっており、成長分野であるロボットやAIの眼となることも期待されている。
また、日本企業の強みはセンサそのものだけでなく、それをサポートする周辺回路の技術力も擁していることにある。一般消費者にはあまり馴染みがなくとも、センサ市場で力をつけている企業として、村田製作所〈6981〉やローム〈6963〉などが挙げられる。
ロームが先日、発表したCMOSオペアンプなどは、その最たる例といえよう。オペアンプとは、簡単に言えばセンサからの微小な信号を増幅してマイコンなどに伝えるための装置だが、電子回路から発生するノイズをいかに抑えて、安定した検出ができるかが求められる。今回、ロームが開発したCMOSオペアンプ「LMR1802G-LB」は、同社の「回路設計」「プロセス」「レイアウト」、3 つのアナログ技術を融合して開発されたものである。読み取った信号を増幅する際に発生するノイズ量が、従来の市場流通品と比較して、1kHz 時約2分の1という業界最高クラスの低ノイズ性能を実現した上、誤差の出にくい高い安定性をもつ製品となっている。これにより、従来読み取りきれなかった微小な信号も正確に増幅できるため、高精度なセンシングが可能になる。産業機器や家電のさらなる進化に貢献するだろう。
新興国のセンサメーカーも動き出してはいるが、こういった総合的な技術力では、まだ日本企業に敵うものではない。来るべきトリリオン・センサ時代に日本企業が世界の市場で大きなリーダーシップを発揮することになるのは間違いなさそうだ。(編集担当:松田渡)