白物家電の販売が好調だ。パナソニックが投資家向け説明会で公表した家電事業の2017年度実績は売上高2兆7964億円、営業利益率は3.8%。同社はこれを2020年までに売上高3兆円、営業利益率5%にまで引き上げる目標も表明している。強気の背景には、所得水準が上昇している中国やインドで高価格帯の白物家電の販売が好調であることを挙げているが、日本国内での家電販売も依然として好調を持続していることも大きいだろう。
中国や台湾メーカーの製品が低価格帯で競争を繰り広げているのに対し、日本メーカーは高価格帯の多機能路線を歩んでいる。価格だけで勝負すると新興国のメーカーに太刀打ちできないという理由もあるが、ジリ貧の価格競争に陥ることなく、製品レベルを引き上げることに繋がっている。それが結果的に質の高い製品を好む購買層に求められているのだ。
家電の高機能化が進めば、それに内蔵されるマイコンの役割が益々重要になってくる。
IoTやロボット家電などの普及もあり、家電にも16bitマイコンが使用されるケースが増えてきた。これまでの家電では、マイコン制御の物でも大容量のメモリを必要とせず、消費電力やコスト面などから8bitのマイコンが主流だった。ところが、最近の多機能、高性能な家電になると8bitでは対応しきれないため、16bitが用いられるようになりつつあるのだ。
マイコン市場では、テキサス・インスツルメンツ社やルネサス エレクトロニクス社、NXP社などが世界的にも有名だが、他の日本の企業も今、16bitマイコンのラインナップと販売網を拡充しつつある。
例えば、ロームのグループ企業であるラピスセミコンダクタは、今年6月から、白物家電や産業機器に最適な16bitマイコン「ML62Q1000シリーズ」について、小容量製品から順次インターネット販売を開始している。同シリーズは全106機種(現量産機種30機種)もの豊富なラインナップで展開している製品で、低消費電力かつ高ノイズ耐性であり、動作温度105℃対応も備えている。しかも、家電の国際規格IEC60730が定める安全項目において、一般品が10項目以下の対応に留まっているのに対して、業界トップの13項目に対応しており、 “ローパワー&タフ&セーフティ”が最大の特長となっている。今回、シリーズのインターネット販売を開始し、製品1個からでも入手できる環境が整ったことで、既に販売中のスタータキットと合わせて即時マイコンを検討、試作することができるので、開発者には大きな魅力となることだろう。
また、セイコーエプソンが発売している16bitマイコン「S1C17 Family」は、各種センサに対応可能な豊富なインタフェース、幅広い表示領域をカバーするEPDドライバ,LCDドライバ/コントローラなど多彩な周辺回路を内蔵している上、回路規模と消費電力は8bitマイコン並みに抑えているのが魅力の製品だ。
白物家電や産業機器の多機能、高機能化が進むと、これまで以上に消費電力や安全性、耐久性などが注目されるだろう。どれだけ優れた家電でも、すぐに壊れてしまっては役に立たない。その心臓部ともいえるマイコンはなおさらだ。信頼性の高い日本メーカー製のマイコンの需要が増えることを期待したい。(編集担当:松田渡)