第一生命経済研究所の試算によれば、働く女性の出産退職による経済損失は約1.2兆円に上ることが分かった。産休や育休を取って職場に復帰するメリットを増やす企業努力や企業をサポートする国の支援が期待される。
第一生命経済研究所の試算によれば、働く女性の出産退職による経済損失は約1.2兆円に上ることが分かった。厚生労働省の調査を基にした試算では2017年に出産によって退職した女性は約20万人で、出産した母親のなんと5人に1人が離職せざるを得なかったことになる。
出産によって退職した女性の雇用形態を見てみると、正社員として働いていた女性は約7.8万人、非正規労働者は11.6万人などとなっている。これほどの人数の労働者が退職するとなれば、日本経済に悪影響が出るのは必至だ。実際これらの女性が退職したことに伴う経済損失は名目GDPベースで約1.2兆円にもなる。人材不足の深刻化で企業が次々と倒産している中、多くの女性は出産による退職を余儀なくされ、さらに人材が不足するという負のスパイラルが生じているのだ。
とはいえ暗いニュースばかりではない。こうした現状を踏まえ、育休の取得率は年々上昇している。17年度の育休の取得率は83.2パーセントと高まっており、出産・育児を経て再び職場に復帰するというケースも増加している。さらに注目すべきは男性の育休の取得率だ。17年度の男性の育休取得率は5.14パーセントと過去最高を記録した。男性が育休を取ることが一般的になれば、女性が出産に伴って離職せざるを得ない状況は徐々に変わっていくだろう。さらに出産・育児による女性の離職に歯止めをかけようと国も対策を講じている。介護やデザイン、IT関連の職業に再び就くことができるようハロートレーニングが全国各地で行われている。ハロートレーニングを終了した場合の就職率は約8割であり、離職した女性の再就職には強い味方だ。
女性が出産に伴って一時的にであれ職場を離れることはやむを得ない。問題は、出産後再び職場に戻ることを躊躇させる環境と言えるだろう。20万人もの人材が失われている現状を変えるため、産休や育休を取って職場に復帰するメリットを増やす企業努力や企業をサポートする国の支援が期待される。(編集担当:久保田雄城)