厚生労働省は児童養護施設を退所して進学・就職した若者を税制面で優遇する方針を固めた。現在は退所した後、生活費などの貸付金には一定の割合で所得税が課税されるが、非課税措置を求めることになる。退所後の経済的負担を少しでも減らして、養護施設出身者の進学や就職を後押ししたい構えだ。
養護施設退所者の進学率、就職率は高くない。NPO法人が600施設を対象に行った調査によれば、2015年度に退所した子供たちの進学率は26.5パーセント、就職率は67.5パーセントだ。17年度の高校卒業者の進学率が71.9パーセント、就職率が17.8パーセントなのとは対照的だ。当然進学率が低ければ、それだけ就職後の収入が低くなることは否定できない。経済的に困窮する退所者が多くなるのも無理はないだろう。さらに児童養護施設退所者の約7割が就職後2年以内に離職するというデータもある。18歳になると施設を退所しなければならず、就職先の選択肢も少ない状態で就職活動をせざるを得ない。そのため就職しても仕事に生きがいを見いだせずやむなく離職するケースが後を絶たないのだ。
こうした事情から経済的な問題を抱えることの多い養護施設退所者を支援しようと、税制面での優遇が検討されることとなった。通常児童養護施設退所者に対しては家賃や生活費が自立支援資金貸付事業として貸し付けられる。自立支援という観点から必要な貸付金であり、5年間就業を継続した退所者に対しては申請によって返済が免除される。しかし一部については免除益として所得税がかかることになっているのだ。経済的に順調でない退所者の場合、この所得税でさえ家計を圧迫することになりかねない。厚生労働省は19年の税制改革において課税対象になっている一部の免除益の非課税措置を求める方針だ。
養護施設退所者がやむを得ない状況ゆえに経済的困窮にある中、人道的観点からも非課税措置の創設は必要だ。彼らのスムーズな自立を促すためにも、きめ細やかな支援が求められている。(編集担当:久保田雄城)