貧困や虐待などさまざまな理由により親と暮らせない子どもは、全国に約47,000人いる。こうした「要保護児童」(社会的養護を必要とする児童)に対しては、乳児院や児童養護施設で育てる施設養護と、家族の中で育てる家庭養護という2つの方法がある。日本の要保護児童の8割強は施設で育てられており、里親委託児童の割合は僅か15%。
他国の要保護児童の育成環境は、かなり事情が異なる。オーストラリアで90%、香港で80%、米国・英国で70%、フランス・ドイツ・イタリアで50%、韓国で40%と、約半数から過半数が里親委託、すなわち家庭養護を行っている。こうした国々では、各自治体が民間の団体と連携し、質の高い家庭養護を提供する取り組みが行われており、現在も広がりを見せている。
家庭的な環境で育てられることは「子どもの権利」とされている。2009年、国連は「国連・子どもの代替的養育に関するガイドライン」を採択。多数の研究結果から、家庭養護は子どもの発達と福祉向上のために重要であることが明らかとなっており、施設養護は家庭養護で保護しきれない場合のやむを得ない選択として機能すべきとされ、日本の施設偏重は海外からも批判されてきた。
昨年夏からの改正児童福祉法の施行により、国は「施設より里親を優先」との新目標を導入。里親委託率を未就学児はおおむね7年以内に75%、就学後の子どもは10年以内に50%へ引き上げるというもの。また、養子縁組は5年で1000件以上の成立を目標とした。
里親制度とは、実親と暮らせるようになるまで一時的に家庭で保護するもので、養子縁組制度とは異なる。里子の戸籍は実親の戸籍に入ったままとする。(場合によっては後に養子縁組を結ぶケースもあり)里親制度の利用が活発となり、家庭で養護される要保護児童の割合を増やすには、さらなる自治体と民間里親支援団体の活動充実が必要になる。また、里親制度の社会的認知や、里親になることへのポジティブな印象を広く浸透させることも大切だろう。(編集担当:久保田雄城)