障がい者雇用促進法によって今年4月から障がい者雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられた。雇用率の算出基準に精神障害も加えられ、民間企業などでは約8万人の障がい者雇用義務が生まれるとされる。精神障がい者が増加する現代社会にあって、円滑な業務の遂行には職場のケアが不可欠だ。
障がい者雇用率には当然あらゆる障がい者が含まれるが、内閣府が公表した障害者白書によれば精神障がい者数は身体的・知的障がい者数を上回っており、企業が障がい者雇用促進法を遵守しようとすれば精神障がい者の雇用が増加することになる。現在就職している、あるいはこれから職に就く精神障がい者が職場に順応しながら業務を行うためには職場の理解とケアが重要となるだろう。
まず精神障がい者は見た目からでは障害を持っているとわからないことが一般的だ。そのため障がい者であることを周りが忘れてしまいコミュニケーション能力の向上を求めたり、業務の効率化を求めたりといった失敗をしてしまいがちになる。そうではなく、精神障がい者への合理的配慮を同僚や上司が意識しなければならない。例えば高次脳機能障害を持つ社員であれば、記憶障害や注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状を表すことがあるだろう。そのケースでは集中力を保てる環境づくりや、手順の細かな説明、一度に与える情報を完結にすることなどを徹底する必要がある。障害の症状がどのように表れるかを理解することが円滑な業務の重要なポイントだ。
実は精神的な障害や問題を抱えている社員の中には適切な治療を受けたり、周囲の理解を得ながら業務を行ったりするようになると非常に高い能力を発揮する人も多い。多くの場合その社員の性格や得意分野にあった仕事や企業方針があるかが鍵になる。もちろん合理的配慮の中でキャパシティを超えないような業務量のコントロールは必要だが、今後精神がい害者を雇用することになる企業はどのような業務が社員に適したものなのかをより慎重に見極めることが重要だろう。精神障がい者の雇用増加は負担の増加ではなく可能性の拡大と見るべきなのだ。(編集担当:久保田雄城)