迫る幼児教育無償化 影響未知数

2018年11月14日 06:41

画・迫る幼児教育無償化 影響未知数

幼児教育の無償化が保育事業に与える影響も見通せず、不透明な状況が続いている

 2019年10月に迫った幼児教育無償化によって子育て世代の負担が軽くなるとされているが、もろ手を上げて喜べないという保護者も少なくない。幼児教育の無償化が保育事業に与える影響も見通せず、不透明な状況が続いている。

 保育事業の無償化は、そもそも19年4月から段階的に実施され、20年4月に全面施行されるはずであった。しかし19年10月に実施される消費増税が子育て世代に与える影響を最小限に抑えるために、消費増税と同時期に幼児教育無償化を前倒しした経緯がある。無償化の対象となるのは3歳から5歳で保育の必要性の認定事由に該当する子どもだ。基本的に認可施設や普通の幼稚園は全面的に無償化、高額な利用料がかかる幼稚園は費用の一部を利用者が負担する。認可外施設を利用する場合には月額3万7千円まで無償化となる。0歳から2歳の未満児であっても、年収約250万円以下の住民税非課税世帯は認可施設で無償化、認可外施設も月額4万2千円までと定められている。

 子育て世代にとっては大きなメリットのある幼児教育の無償化だが、中には無償化によって掘り起こされるさらなる需要を懸念する声もある。幼児教育の無償化が実施されれば、これまで子どもを幼稚園や保育園に通わせていなかった保護者も認可施設の利用を希望するようになる可能性がある。この新たな需要によって現在全国に5万5千人以上いるとされる待機児童問題がさらに深刻化する恐れもある。加えて需要増による保育の質の低下も懸念される。幼稚園教諭や保育士の数が増えなければ、一人あたりの仕事量が増加し質の高い幼児教育を提供することは難しくなるだろう。

 幼児教育の無償化によってどんな影響が保育事業にもたらされるかは今のところ未知数だ。無償化を歓迎する声も多く聞かれる一方で、保護者の不安は尽きない。今後は国や自治体が協力しながら、保育士の資格を持つ人材の発掘などに力を注ぎつつ幼児教育の質を高めるための措置を講じていくべきだろう。(編集担当:久保田雄城)