2019年10月から幼児教育・保育の全面無償化が実施される。株式会社ウェルクスがこれに関して保育士と幼稚園教諭の有資格者を対象にアンケートを実施したところ、67.1%もの反対意見があることが分かった。同年5月からは5歳児のみ先行して制度が開始されるが、現場で働く側から見ると無償化がデメリットに感じる部分も多いようだ。
幼児教育・保育の無償化は少子化対策の一つとして検討されてきた制度である。20代から30代の若い世代の中には金銭的な負担が大きいために子供を持てないと考える家庭も多く、仕事を休業する事も困難であることから女性が出産を諦めるようなケースも目立つ。これを受けた政府は13年から待機児童解消のための取り組みを実施しており、それと並行して今回の幼児教育無償化を組み込む事により子育て世代の負担軽減を図っている。
無償化の対象となる条件はいくつかあるものの、子を持つ親やこれから子供を持ちたいと考えている世代からしてみれば嬉しい制度となることは間違いない。しかし保育士等の有資格者から見た場合、これによる業務負担の増加なども懸念されている。日本では長年保育士が不足している状況も定着しているため、無償化によって更なる人材不足が起こる可能性も否定はできない。
無償化の全面実施で人材不足を招いた場合、保育の質そのものも低下するのではないかと言う懸念の声も大きい。保育園の利用を希望する親が増えたとしても、増加した子供の人数に対応できるだけの人員が確保できていなければ適切な保育や教育ができなくなる恐れもある。またそれによって子供の受け入れ自体が困難な状況になれば、再び待機児童が増えてしまうケースも考えられるだろう。
幼児保育・幼児教育の無償化を実施する事については、少子化対策や女性の社会進出と言った観点から見ても歓迎されるべき制度であるはずだ。しかし制度を適切に実施していくための土壌が整っていなければ、実際に教育を受ける側である子供や、その親にとっての完全なメリットにはなり得ない。サービスを提供する側に生じる負担に関しても目を向けていく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)