「道の駅」にホテル? 積水ハウスとマリオットが仕掛ける、全く新しいニッポンの旅

2018年12月02日 11:58

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住宅大手の積水ハウスと130ヶ国・地域でマリオットやリッツ・カールトンなど様々なブランドのホテルを展開するマリオット・インターナショナルが11月28日、地方創生プロジェクトを立ち上げた

 日本は今、空前のインバウンドブームに沸いている。日本政府観光局(JNTO)の集計によると、2018年1月から10月までの訪日外客数の累計は9.7%増となる約2,611万人と、着実に伸びていることが分かった。2020年に控えた東京オリンピックに加え、2025年の万国博覧会の開催地が大阪に決まるなど、訪日外客誘致の強力な材料が揃っているだけに、しばらくの間はこの特需も続きそうだ。

 インバウンドで恩恵を受けるのは大都市圏だけではないかという声もあるが、実際はそうとばかりも言い切れないようだ。観光庁が発表した観光統計の宿泊旅行統計調査によると、地方都市へのインバウンド需要が急速に拡大していることが分かる。2017年に地方部に宿泊した外国人数は過去3年で2倍の3266万人となっている。また三大都市圏に対して地方に約40%の外国人が宿泊したことになり、その比率も過去3年で上昇している。この背景には、ツアー会社が仕掛けるパッケージツアーや、自治体などの働きかけも大きいと思われるが、その根本にあるのは、日本でしか体験できないような、その地方ならではの魅力が大きく影響しているのではないだろうか。訪日外客の興味をそそるような魅力を発信することさえできれば、東北や九州だけに限らず、地方の田舎町であっても、訪日観光客を呼び寄せることはできるはずだ。

 そんな中、住宅大手の積水ハウスと130ヶ国・地域でマリオットやリッツ・カールトンなど様々なブランドのホテルを展開するマリオット・インターナショナルが11月28日、地方創生プロジェクトを立ち上げた。

 両社が提案するのは、「道の駅」をハブにしたロードサイド型ホテルだ。「Trip Base 道の駅プロジェクト」と名付けられたこの新事業は、「未知なるニッポンをクエストしよう」というコンセプトのもと、国内の各自治体と連携し、「道の駅」と隣接する形でホテルを展開していくというものだ。ホテルはシンプルにゆったりとくつろぐことに重点を置いた宿泊特化型で、食事や土産物などは道の駅をはじめとした地域の店舗で購入するスタイルをとる。地元コミュニティと協力しながら地域とのふれあいを最大化することで、国内の旅行者はもとより、訪日観光客にも日本ならでは、その地域ならではの、食をはじめとした文化や風習、暮らしなど、地域体験を提供しようというユニークな試みだ。

 また、人気の「道の駅」にホテルが隣接しているので、旅行者は自動車やバイク、自転車などでホテルを渡り歩きながら、地域の魅力、ニッポンの魅力を体感することができる。地方から地方へ。単なるホテル事業に留まらず「未知なるニッポンをクエスト」するような新しい旅が生まれそうだ。

 「Trip Base 道の駅プロジェクト」では、2020年秋以降に栃木県、岐阜県、三重県、京都府、和歌山県の5府県15か所約1000室の規模でオープンするのを皮切りに、順次全国展開していく予定だという。

 積水ハウスの仲井嘉浩社長は記者会見の席上で「本事業の推進は、地元の観光事業者と自治体、アライアンスパートナーの協力なしには実現できない。今後、地元とのつながりを創出するため、カーシェアリング、自転車、アウトドア、各種メディアなどの様々なアライアンスパートナーと協力していきたい。賛同者と共に地方創生・地域活性化の一助になれるよう、本プロジェクトを推進していく」と意気込みを語った。

 確かに、都市部から外れた地方には未だ限られた宿泊施設しかなく、とくに訪日観光客にとっては地方への旅はハードルの高いものだっただろう。「Trip Base 道の駅プロジェクト」が成功すれば、その垣根は一気に取り払われる。日本人も知らないような、新しい地方の魅力が訪日旅行者によって発掘されれば、地方創生の大きな一歩となるだろう。(編集担当:藤原伊織)