2020年東京五輪・パラリンピック運営で課題となる交通渋滞対策で、大会組織委員会や国、東京都などは大会期間中、首都高速道路通行料金を上乗せする方針を固めた。国内で初めてと言える本格的な「ロードプライシング」の導入に踏み切るということになる。競技が行なわれる時間を中心に、通行料に上乗せする。金額は距離に応じて普通乗用車で500~3000円アップさせる案を検討しているという。対象車両の区分けや上乗せする時間帯など具体的な内容は今後詰める。
2020年東京五輪では、選手や大会運営関係者の円滑な移動と大都市の物流活動をどう両立させるかが課題だ。東京都や大会組織委員会は交通渋滞対策として期間中の交通量を抑制したい考えだが、競技会場が多い臨海部は物流の拠点でもあり、対応に苦慮する運送会社も少なくない。
水泳競技場や有明テニス森などの競技会場や五輪プレスセンターが集まる臨海部は、東京の一大物流拠点でもある。大型トラックが集まる多くの運送会社の拠点は、約2万6000人のメディア関係者が出入りするプレスセンターとなる東京ビッグサイト周辺に多い。
大会時は、選手村から競技場まで選手や競技関係者のスムーズな移動が必須となる。同時に首都高などを利用する物流企業などの経済活動の両立も大切だ。十分な対策を取らなければ、首都高の渋滞が現状の2倍近くになるとの試算もある。組織委としては都心への車両流入を減らし、円滑な輸送につなげたい考えだ。
関係者によると、選手らの主要な輸送ルートとなる首都高の料金の上乗せは、都心部の中央環状線の内側が候補。午前6時~午後10時に普通乗用車や軽乗用車、二輪車を対象とし、物流への影響を考慮して中型車以上のトラックなどは除外する。
通常、首都高の交通量は1日約100万台で、通行料金は乗用車で最大1300円だ。組織委や都、国交省などの試算では、500円から1000円を上乗せした場合、交通量が1割ほど減る効果があるとしている。通行料金の値上げには、一般市民や中小企業からの反発も予想され、「効果は大きいが、慎重な論議が必要」との意見もあり、本格導入には紆余曲折が予想される。
同時に企業などに、五輪期間中の時差出勤などを呼びかけ、大手配送業者には大会中のルートの変更などへの協力も要請、運送会社だけではなく、アマゾンや楽天など荷主側の企業にも交通量の抑制に向けて働きかけたいとする。組織委員会として競技期間の首都圏の交通量を15%削減したい計画で臨む。(編集担当:吉田恒)