東京オリンピック・パラリンピックがもたらすレガシー効果。企業の商品パッケージにも大きな変化

2019年01月27日 12:22

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東京都の試算では、オリンピック・パラリンピックの招致が決まった2013年から30年までの18年間で約32兆3千億円の経済効果があると発表。

2020年の夏に開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、日本の社会が徐々に盛り上がりを見せ始めている。スポーツ関連の業界はもとより、普段はスポーツとは縁遠いような企業でもオリンピックやパラリンピックに合わせた取り組みが目立つようになってきた。

 東京都の試算では、オリンピック・パラリンピックの招致が決まった2013年から30年までの18年間で約32兆3千億円の経済効果があると発表。全国の雇用も約194万人増加すると見積もっている。経済効果といえば、競技会場の整備費や大会運営費、大会開催の直接投資や支出で生じる直接的効果のイメージが強いが、実は開催期間中に生じる効果は、その内の約5兆2千億円に過ぎない。それよりも、交通インフラ整備やバリアフリー対策、訪日観光客数の増加、競技会場の活用、スポーツ人口やイベントの拡大などがもたらす有形無形の社会的遺産、いわゆる「オリンピック・レガシー」と呼ばれるものが占める割合の方がはるかに大きく、約27兆1千億円に上ると推計されている。そして、このオリンピック・レガシーのカギを握るのは、パラリンピックの成功にかかっていると言われている。

 東京都が2018年1月に公表した「オリンピック・パラリンピック開催、障害者スポーツに関する世論調査」によると「 障害者スポーツに関心がある」と答えたのは57%で、2015年の調査と比較すると12ポイント増加。また「障害者スポーツに関することでしてみたいこと」という質問には77%の人が「テレビで障害者スポーツの試合を観戦する」と答え、こちらも15年の調査と比較して15ポイント増加している。やはり日本での開催に向けて世間での関心も高まっているようだ。 

 そんな中、企業のパッケージにも変化が現われはじめている。例えば、コーセーコスメポートでは、化粧品業界でも早くから商品のユニバーサルデザイン化に力を注いでおり、製品のキャップや包装表面に点字表示や触覚識別対応パッケージ、カラーバリアフリーデザインなどを積極的に取り入れているほか、点字と拡大文字で化粧品のアイテム名や使い方を表示した「点字ラベルシール」を無料で提供するなどしている。

 実は、同じ化粧品業界においてユニバーサルデザインを先駆けて採用してきた企業がある。はちみつや健康食品で知られる山田養蜂場だ。今年で20周年を迎えたローヤルゼリー化粧品では、発売当初から商品のパッケージの外箱に点字を印刷しているほか、ローヤルゼリーエキスを配合したスキンケア製品「RJエクセレント」シリーズの容器では、本体にくびれを持たせ、キャップや本体に蜂の巣をイメージしたハニカム模様の凹凸を施すことで、落としにくいように、ユニバーサルデザインを意識した意匠が採用されている。

 化粧品をはじめ、デザインの美しさが求められる商材にも、こういった配慮が求められる時代に突入している。

 もちろん、国、都、区等による取り組みも活発化している。アクセシブルルートに加え、競技会場や周辺の駅、ターミナル、空港、道路、交通機関、公園、公衆トイレなど、さらには全国の観光地などでもバリアフリー化が進んでおり、日本という国が大きく生まれ変わりつつある。

 一つ一つは些細な変化であるのかもしれないが、それらが集まることで大きな力となり、今後の社会生活を豊かにしてくれる原動力となるはずだ。オリンピックやパラリンピックの開催がそのきっかけとなり、数字だけの経済効果以上のレガシーを日本にもたらしてくれることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)