IoT社会を加速するWi-SUN FAN。世界初の認証取得無線機の登場で、いよいよ本格始動か

2019年02月10日 11:34

ローム0208

京都大学と日新システムズ、ロームの3者は2月4日、世界初となるWi-SUN FAN認証取得の無線機を発表。スマートシティやスマートグリッドなどのIoT社会を加速する技術に期待が高まる。

拡大するIoT市場にとって欠かせない無線通信技術。中でも、920Mz帯の特定小電力無線を用いる国際無線通信規格「Wi-SUN」への注目が高まっている。

「Wi-SUN」は、Wi-SUNアライアンスがIEEE802.15.4g規格をベースに策定している規格だ。Wi-Fiなどの無線LANよりも低消費電力で通信距離が長いという利点を生かし、東京電力が2013年にスマートメーター用無線通信方式として採用したのを皮切りに需要を拡げており、現在ではスマートメーターとHEMS(Home Energy Management System)をつなぐ「Bルート」の主力方式に成長した。また、交通インフラなどのスマートコミュニティやM2M(Machine to Machine)においても採用が進んでいる。

 そして、さらに今後の展開が期待されているのが、Wi-SUNの新規格「Wi-SUN FAN」だ。

 Wi-SUNの規格には他にも「Wi-SUN HAN」があるが、FANとHANの大きな違いは、主たるアプリケーションの利用範囲が屋外か屋内かという点にある。どちらの規格もIEEE802.15.4g規格の低消費電力無線伝送技術とIPv6によるマルチポップが特長だが、Wi-SUN FANは、スマートシティやスマートグリッドなどの屋外通信を基本とするシステムに、より適した無線技術というわけだ。今後は、電気やガスなどのスマートメーターだけに留まらず、インフラストラクチャ、高度道路交通システムなど、相互通信を必要とするさまざまな場面での活用が期待されている。

 Wi-SUNアライアンスが2016年5月にWi-SUN FAN標準仕様を制定し、2018年10月にはWi-SUN FAN認証プログラムを発表したものの、認証を取得した無線機自体は未だ存在していなかった。そんな中、2019年2月4日、待望のWi-SUN FANアライアンス認証を取得したWi-SUN FAN搭載無線機器が登場した。

 この世界初となるWi-SUN FAN認証取得の無線機を発表したのは、京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下京都大学)と日新システムズ、ロームの3者からなる「次世代Wi-SUN共同研究コンソーシアム・京都」だ。核となるIEEE 802.15.4/4g/4eの標準化・開発にあたっては京都大学、Wi-SUN対応の通信ミドルウェアの商用化は日新システムズ、同標準化に対応した通信モジュールの開発はロームが担当した。原田博司教授はWi-SUNアライアンス設立時の共同創業者であり、現在Wi-SUNアライアンス理事会議長、Wi-SUNアライアンスHAN WG議長として、Wi-SUNシステムの技術仕様策定、普及活動を行っている、いわばWi-SUN技術の第一人者だ。また、ロームは要素技術で欠かせないIEEE802.15.4g規格に対応するRF技術やWi-SUN FANスタックを搭載する最適なMCUの選定技術、それらのモジュール製品化技術などを保持しており、Wi-SUNに関してこれほど強力なタッグは他にないだろう。

 ちなみに本成果は、発表翌日の2月5日にアメリカ・ニューオーリンズで開催された米国最大級の電力業界関連イベント「DistribuTECH 2019」のWi-SUNアライアンスブースにおいても展示され、業界関係者から大きな注目を集めていたという。

 IoT社会を加速する技術と期待されていたWi-SUN FANが、いよいよ本格的に動き始めた。今後の展開にも大いに期待が持てそうだ。(編集担当:藤原伊織)