子どもの貧困は普段目に見えにくいだけに深刻である。経済的な困窮により十分な教育を受けられなかったり部活動や習い事を経験できなかったりするなどの問題は、次の世代にも影響を与える。負の連鎖を断ち切るためには貧困問題に対する意識をもつことが求められる。
貧困層と富裕層の差や老後破産など貧困に関するテーマは近年多く語られるが、大きな問題となるのは子どもの貧困である。子どもの貧困は相対的貧困の状態にあることをいい、普段の生活では目に見えにくい。
等価可分所得が平均以下であることを相対的貧困と呼び、世帯の可処分所得(手取り収入)を世帯人員の平方根で割った数値が中央値より半分であることを指す。必要最低限の衣食住を満たすことのできない絶対的貧困とは異なる。
相対的貧困の家庭で育つ子どもは、教育や体験の機会が乏しくなる傾向にある。絶対的貧困とは異なるため、ホームレスのような状態で暮らさなければいけないということはない。しかし、経済的な理由により塾に通うことはできない。学用品を購入するのが経済的に困難な場合や、修学旅行に行けないということもケースとしてはある。高校や大学に進学することができても経済的に困窮して学費が払えずに中退することも多い。学業の面だけでなく、費用のかかる部活に入ることや習い事をすることなどはできない。一般的な子どもが大人になるまでに普通に経験していくことを、貧困の状態にある子どもは経験できないのだ。
子どもが必要な教育を受けることができないことや、部活でスポーツや文化に接することができないということの問題点は、この状態が次の世代にも連鎖するということである。
平均的な大卒者の初任給と高卒者の初任給を比べると、大卒者の初任給のほうが5万円近く多い。生涯年収においても、学歴が高くなるほど年収も高くなるという統計が出ている。つまり、進学できなかったり中退したりするなどで教育を受けられずに中卒や高卒で働きはじめて家庭を持ち、子ども育てるとしても、その子どもに十分な教育や体験を受けさせるだけの賃金がもらえない相対的貧困の状態を再び生み出す可能性が高いのだ。
子どもの貧困により教育や体験が不足し、それが負の連鎖となる状態を防ぐためにはなにが必要だろうか。貧困の状態にある子どもと関わって教育などの機会を充実させるためのNPOもあり、そういった活動を充実させるのもひとつの方法ではあるだろう。加えて、子どもを育てる立場にある親や教育に携わる人間が目に見えない貧困に気づき、打開策を考える意識を持つことが必要である。(編集担当:久保田雄城)