近年、労働者の名目賃金は上昇傾向で推移している。先月29日に厚生労働省が公表した平成30年賃金構造基本統計調査結果の概況を見ると一般労働者(フルタイム労働者)の賃金は2002年以降低下傾向で推移し、いわゆるデフレの状況にあったが10年以降に上昇傾向へと転じ、特に14年以降では1%を超える大幅な上昇も見せている。ここ数年は人手不足を背景に上昇傾向を維持しているというものの1%未満の緩やかな上昇にとどまっている。
18年の月額の賃金は30万6200円で、これは過去最高額である01年の30万5800円を上回る額である。前年17年が30万4300円であったので対前年増加率は0.6%ということになり、前年の0.1%増、前々年の0.0%を上回った。ちなみに平均年齢は42.9歳、平均勤続年数は12.4年である。
男女別に見ると、男性が33万7600円で増加率は0.6%、平均年齢は43.6歳、勤続年数は13.7年となっており、女性は24万7500円で増加率0.6%、年齢41.4歳、勤続年数9.7年となっている。長期的な推移を見ると、男性は男女計と同様に02年以降に低下傾向となり10年以降は上昇傾向だ。一方女性では05年、10年、13年のわずかな低下を除き一貫して上昇傾向で推移している。
こうした推移から女性の賃金の男性のそれに対する比率は05年の65.9から上昇傾向で推移してきており18年は73.3と7割前半台となっているものの、前回17年が73.4であったので0.1ポイントの低下となっている。16年は73.0であったので3年連続で伸びが鈍化して足踏み状態であるようだ。
年齢階級別に男女賃金格差を見ると、20~24歳で男性を100として女性が95.6を最高に20歳台までは90を超えており若い世代では大きな格差が見られないのに対して、45~49歳で68.0、50~54歳および55~59歳がともに63.5と7割を切って60台前半まで落ち込んでいる。
これは男性の50~54歳が42万6000円、55~59歳が41万9500円と50歳代が最高となっており、そこまでは年齢が上がるにつれ月額賃金が上昇していくのに対して、女性では25~29歳の22万9600円から50~54歳の27万600円まであまり大きな上昇が見られないためである。この背景としては女性の管理職への登用が少ないということも考えられる。また、女性の勤続年数は13年の9.1年から18年の9.7年へと緩やかに増加しており男女格差の減少傾向はこれによるものかもしれない。(編集担当:久保田雄城)