健康食品業界は、アンチエイジングなど、健康面だけでなく美容面との相性も良い分野でもあり、サプリメントをはじめ、製薬会社や化粧品会社も力をいれている。その市場規模は約9,500億円とも約1兆1,800億円とも言われ、今年は震災の影響で甚大な被害を受けたものの、かえって健康への意識が高まった等の理由から後半は需要が回復。健康産業新聞によるとその下げ幅は3%程度に留まると見られている。
ヨーグルトがトクホをとって以来、「明らかに食品」であるものがその主力であったが、現在ではサプリメントがこの市場をけん引しており、新たな局面を迎えているようだ。その理由として摂取方法の多様化が挙げられる。これまで青汁やヨーグルトを中心に、飲料タイプの健康・自然食品は普及しており、本年度も雪印メグミルクが「一日分シリーズ」をリニューアルして発売するなど、そのバリエーションを増やし、細かな需要に対応している。それに加えて「飲むサプリメント」と銘打った商品が広がりつつある。例えばアサヒ飲料が「ディアナチュラ」のドリンクシリーズに新商品を追加、森永乳業もサプリメントジュースの新味を発売している。資生堂までもが美容成分を配合したドリンクタイプのサプリメントの発売を開始するなど、各社、飲料としての摂取を提案しているようだ。
また、コラーゲンを配合した「美肌ロール」パンや、ライチ由来の低分子化ポリフェノール「オリゴノール」を配合した焼ドーナツを販売している札幌グランドホテルでは、今年も「オリゴノール」を配合した新作クリスマスケーキを発売。さらに、雪印メグミルクから発売された「ミルクセラミド」配合のサプリメントはグミタイプであるなど、その多様化が加速し続けている。錠剤タイプは嚥下力の低下した高齢者には摂取しにくいなどといった点に着目し、一定の需要が確立された成分を中心に、より手にしやすいタイプの模索が始まったといえるであろう。
さらに、近年注目された成分の商品化も広がってきた。中でも今年の注目は「レスベラトロール」であろう。レスベラトロールの持つ健康長寿に対する可能性が6月にNHKスペシャルで紹介されたことで、国内での認知度や需要が急激に加速。富士経済の調査によると、横ばい状態の市場にあって、2010年の約8億円から2011年見込で約16億円、2016年予測では約25億円と、群を抜いて成長が著しく期待されている。山田養蜂場やノエビアなどもレスベラトロールを相次いで商品化、販売を開始している程だ。
またタカラバイオが、冷え性や貧血・美容などによいとして最近注目されていれるプラセンタを配合したチュアブルタイプの美容サプリメントを発売。雪国まいたけは、マイタケα-グルカンを含む凍結乾燥マイタケ抽出物がインフルエンザ治療効果のあることを富山大学との共同研究成果として発表、サプリメントとして販売を開始した。ファンケルは、体の抵抗力に働きかける漢方由来の新成分「コウバクニクジュヨウエキス」のサプリメントを販売。さらには、ラクトフェリン等含有サプリメントの継続摂取が、風邪等の症状・胃腸炎症状の発症を抑えることに有用な可能性があると森永乳業が発表するなど、今後の動向が気になる成分の研究及び商品化が広がっている。
一方で、古くからその健康への効能が広く知られていた食品もその存在感を堅持している。中でも数年前から流行となっている生姜は今年も健在。永谷園の『「冷え知らず」さんの生姜シリーズ』を筆頭に今年も新商品が続々と登場。飲料や菓子類、パン類やスープ、調味料などといった食品から、ヤクルトがシトルリンを配合した健康機能性飲料にしょうがエキスも配合するなど、健康食品にさらにプラスする形での利用も進んでいる。
一般消費者の健康への意識が高まっている中、健康食品業界は、他業種からの新規参入なども含め、さらに開発・販売競争が激化していきそうだ。高齢化が進み、日本の医療費問題が深刻化していく今後、予防医学の観点からも健康食品に対する需要はさらなる拡大を見せていくことになるであろう。