人手不足倒産、過去最悪。求人難倒産2.6倍に。人件費高騰型も急増

2019年04月18日 06:57

画・人手不足倒産、過去最悪。求人難倒産2.6倍に。人件費高騰型も急増。

東京商工リサーチが2018年度「人手不足」倒産の調査結果を発表。18年度の人手不足関連倒産は前年度比29%増の400件で過去最高。中でも求人難型が162%増の76件で2.6倍に。人件費高騰型も急増。

 景況の見通しは一部に不透明感が増してきたとも言われるが、今のところ日本経済は緩やかな回復基調を維持しており企業倒産は全体としては低水準だ。しかし、一方で人手不足が深刻さを増しており、有効求人倍率も直近2月のデータで1.63倍と極めて高い水準を維持している。こうした中、人手の確保が困難な求人難型の倒産や賃金上昇にともなう人件費高騰で経営を圧迫された企業倒産が急増している。

 5日、東京商工リサーチが2018年度の「人手不足関連倒産」に関する調査結果を公表している。18年度中の「人手不足関連倒産」は前年度比28.6%増加の400件で過去最高だった15年の345件をはるかに上回り過去最高を更新した。

 原因別の内訳を見ると「後継者難」型が269件と引き続き最も多く、前年比で7.6%の増加であった。次いで 「求人難」型も76件で、前年度の29件と比べ2.6倍、162.0%の大きな増加となっている。賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型は30件で、前年度の14件の倍となり114.3%の大きな増加となっている。「従業員退職」型は25件で前年度比38.9%の伸びとなっている。全体の中での構成比は未だ小さいものの「求人難」型と「人件費高騰」型が急増しており、ともに人手不足による影響が倒産にまで至ったケースである。

 産業別にみると、サービス業他が前年度比34.6%増加の105件で、業種別の内訳では飲食業が23件、老人福祉・介護事業が12件、医療関係10件、人材派遣業9件、土木建築サービス業7件などとなっている。他の産業は、建設業が75件で4.1%増、製造業が62件で58.9%増、卸売業が59件で43.9%増、運輸業が34件で61.9%増と続いている。

 やはり求人倍率が高い業種で人手不足関連倒産も多くなっているが、建設業は高止まりながらも落ち着きを見せてきているようだが、かわって飲食、福祉・介護、医療などのサービスで急増しているのが目立ち、これらの業種では人手不足の深刻化が既に事業の維持に関わるような深刻なレベルにまで達していることがわかる。

 地域別に見ると、東京のある関東が173件と断トツで多く前年度比は38.4%となっている。また、九州が62件で前年度の39件から23件の大幅な増加で、中部も43件で前年度より9件の伸びとなっており、地方にも人手不足関連倒産が広がりつつあるようだ。今後は人手不足を背景にした労務倒産多発による景気の失速も心配だ。(編集担当:久保田雄城)