金融庁は2017年の方針より地方銀行の投資用不動産向け融資の不良債権化について懸念を表明していた。地方での人口減少に伴う資金需要の減少によって地方銀行の融資先も減少傾向にあり、地方銀行はアパート建設を中心とする個人向け投資用不動産融資のシェアを増加させてきた。これらのアパートの空き室率が増加傾向で推移してきたため金融庁は不良債権化への懸念を表明、これを受け地方銀行も既に個人向け不動産融資を抑制する方向で動いている。
金融庁は昨年発覚したスルガ銀行等の不正融資問題を受け、昨年の10月と11月に121の銀行、261の信用金庫、148の信用組合を対象に主に投資用不動産向け融資に関連する事項についてアンケート調査を実施し、その報告書を3月28日に公表している。
この金融庁の発表に関連し、不動産評価・情報サービスのタスが先月下旬、「賃貸住宅市場レポート2019年4月」の中で首都圏、関西圏、中京圏、福岡県での空室率、募集期間、更新確率、中途解約確率について指標を公表した。
タスの指標によれば、1都3県の2月時点でのマンション系空室率は全地域で落ち着きを見せつつある一方、アパート系空室率では神奈川県と千葉県で悪化が続いており、東京市部、神奈川県では募集期間が拡大している。また、関西圏、中京圏、福岡県での2月時点の賃貸住宅指標は、全体的に空室率は横ばいから改善傾向にあるものの、静岡県で募集期間の急激な拡大傾向が見られ地域によって多少のバラツキがあるようだ。全体としては落ち着きの傾向を示しているというものの、南関東を中心に各指標が悪化傾向で推移している所も見られデッドストック化への懸念は未だ払拭されていない。
金融庁は、物件に係る審査については客観的な情報に基づいた収益評価による検証を行うべきとし、これをマニュアル化し金融機関にその徹底を求めるとともに、融資後の定期的な検証、紹介会社の健全性や顧客のリスク認識の確認の徹底なども求めている。こうした審査、チェックを徹底することに伴い金融機関の融資審査に係る負担はさらに増大すると予想される。金融庁は今後、立入検査なども含む徹底したモニタリングを実施する予定だ。こうした背景から金融機関の投資用不動産向けの融資態度は今後も引き続き硬化するものと見込まれている。(編集担当:久保田雄城)