「ブルーバード」の冠をはずし、「シルフィ」として再出発

2012年12月08日 11:00

 日産自動車は2000年からブルーバード シルフィとして販売してきた4ドアセダンをフルモデルチェンジ。12月5日からは「ブルーバード」というネーミングをはずしてシルフィという名前で発売した。

 かつて日産自動車の看板車種だった「ブルーバード」の名前が消えることを惜しむ声は多い。が、国内だけでも累計470万台以上を販売したブルーバードの、特にブルーバード シルフィとなってからの販売実績は惨憺たるもので、2011年に月間400台強というところまで落ちこんでいた。このデータは販売店1軒につき月1台も売れていないことを示している。ブルーバードの好敵手だったコロナや、かつては格下だったがモデルチェンジごとにクラス感をあげるカローラのようなトヨタのライバル車は、早くから多様化するニーズに合わせてボディスタイルをセダンに絞らずに展開してきた。一方で、ブルーバード シルフィは最後までセダンにこだわっていたことも販売不振の原因だった。

 「小型から中型のセダンというカテゴリーには確実に固定客はいます。が、クルマ人口の中ではセダンにこだわるユーザーの割合はあまりにも少なくなってしまったいということなんでしょう。小さめのボディのセダンはハッチバックやSUVに比べて使い勝手が悪そうなイメージも定着してしまって、4ドアセダンはニッチなジャンルになってしまいました」(業界関係者)

 事実ブルーバードの名前を外された新型シルフィも国内販売は月間600台が目標で、かなり細々とした再出発という感じは否めない。ターゲットはブルーバードの全盛期を知る中高年層というところも、何となく皮肉めいている。といっても今回の新型シルフィについて、けっして斜陽のクルマだとは日産自動車では考えていない。「年間の総生産台数は50万台」という計画の新型シルフィは、ほとんどが海外工場で生産され、近いうちに新型シルフィは世界120か国(または地域)以上の市場に投入される計画だからだ。

 「オーソドックスで上質な小型のセダンを求める声は、むしろ海外にありますからね」とは、先の自動車業界関係者も認めている。「ブルーバード シルフィも名前を変えて世界で売られていたり、海外生産もされていました。でも今回のシルフィはボディサイズも日本の5ナンバー枠にはこだわっていません。日本では3ナンバーになってしまい、ますます国内のユーザーを減らすことになりかねませんが、それでも踏み切ったのも世界的なスタンダードカーとして打って出るためだと思います」

 そういうことだとすると、名車ブルーバードの名前はむしろシルフィにとっては「呪縛」だったのかもしれない。そして解き放たれたシルフィは世界戦略車として堂々と走り出したとみる方が正しいのかもしれない。