4月に働き方改革関連法が施行された。働き方改革とはもともと国連からの指摘を受けて日本の労働時間、残業時間を減らすよう政府主導で始められたもので、いわば勤労者の人権問題として始まったものと言ってよい。
単に残業を禁止するだけでは、持ち帰り残業など不払い労働、労働強化につながる危険性もあり、これでは本末転倒だ。実際、残業抑制制度が管理職の労働強化につながっているというレポートもある。働き方改革としての労働時間短縮は作業効率化とセットで労働生産性の向上の実現として行われる必要がある。
生産性の向上と言っても単なる精神論であれば労働強化と変わりが無い。為すべきことは、作業モデル、業務モデルのシステマティックな改善、創意・工夫だ。作業を進める上で必須なのは事務作業、つまり情報処理だ。何をどのように処理するかという知識の獲得は作業を進める上で欠かせない。この知識獲得の時間は決して無視できるほど小さくない。
3日、IT関連サービスのオウケイウェイヴ総研が発表した全国1000名の会社員を対象にした「社内業務」に関する調査の結果によれば、「調べもの」という知識獲得作業に費やしている時間は「2時間未満」が69.2%、「2時間以上」が30.8%で平均1.6時間となっている。この「調べもの」に費やす時間をストレスと感じていると答えた者は80.0%とほとんどの者が可能な限りこの作業時間を短縮したいと思っているようだ。
このレポートには「調べもの時間」の大幅短縮を実現した事例が紹介されている。飲料メーカーのサッポロ・グループは社内のナレッジ共有方法・検索体制を整えることで「調べもの」時間の短縮に成功した。グループを統括するサッポロ・ホールディングスはAIチャットボットと社内FAQを活用し「社内問い合わせチャットボット」として社員の「調べもの時間」を大幅に短縮する取り組みを行った。
例えば人事部への「社内問い合わせ対応」の自動化によって、書類作成の問い合わせ・回答などをAIロボットで自動化することにより現場と指導側の双方の作業効率の向上が期待できる。また、ユーザーの質問文に対して回答候補を検索し複数の回答を表示するAIチャットボットも導入し人事部以外の部署の生産性も向上した。
レポートではAI形式知の共有が探索時間を削減し「リソースを本来業務に投資することで、企業ブランド価値創造を高めることにもつながる」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)