政府の主導するインバウンド(訪日客引き込み)戦略は計画を上回るペースで順調に進んでおり、2018年には既に3000万人を突破し今後も更に伸びる勢いだ。インバウンドは地方創生の重要な施策の一つでもあるが、訪日客の出身国・地域は中国・韓国などの東アジア諸国で7割を超えていることもあるのか、人気スポットは東京ディズニーランドや大阪のUSJなど大都市圏にかたよっている。政府も自治体も地方への分散を図っているがなかなか進展しない状況だ。
東京海上日動火災保険は16年7月、社内に地方創生室を立ち上げ、地方自治体や金融機関との協力を深め地方創生への貢献につながる取り組みを進めてきた。一方、NTTデータは自然言語処理エンジンやAIを用いてツイッターなどのSNSのテキストデータと数値データの双方を含むビッグデータの解析について積極的な取り組みを行ってきた。
そこで今回、両社はインバウンド観光にフォーカスしたソーシャルメディアの分析を事業会社としてはじめて全国規模で実施し、5月28日にその結果の概要を2社共同名で発表した。分析対象となった投稿はツイッター、Weibo、観光レビューサイトへの投稿の合計176万7939件の英・中・韓国語データだ。全国をマクロに分析した結果に加え、観光スポット同士の発言相関を調査することで評価の高い穴場スポット等も抽出している。
スポット別の投稿数とその評価を分析してみると、関西スポットの投稿が多く、また評価の高い投稿が多いことがわかった。スポット間の発言相関を分析すると、USJに訪問した者は関西圏を周遊しているのに対し、東京ディズニーランド・ディズニーシーを訪れた者はUSJも訪問するとともに、京都・伏見稲荷大社など関西圏スポットをも周遊し、関西圏に観光客が流れているとレポートは推測している。
本調査では出身地域ごとに人気アニメタイトルも分析しているが、アジア、北米、欧州、オセアニア、中南米ではポケットモンスターが1位、中華圏でも3位とやはりポケットモンスターが人気アニメキャラのようだ。
この調査結果は東京海上日動火災保険の代理店を通じ全国に配布されて観光スポットの創出にも利用されたこともあり、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部の「特徴的な取組事例」に選定され大臣表彰を受賞している。(編集担当:久保田雄城)