安倍晋三総理は10日の参院決算委員会で、立憲民主党の蓮舫党副代表の問いに、公的年金について「積立金は6年間(安倍政権下)で44兆円の運用益が出た。公的年金の信頼性はより強固になった」と強調した。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株式市場への年金資金の投入を増やしてきたことが背景にある。
株式市場ではGPIFや日銀が信託銀行を通じ間接保有している株式の量が東証一部上場企業のおよそ4社に1社の割で「筆頭株主」になる(2016年夏報じた日本経済新聞独自調査結果)ほどに、株式市場への影響力を持つようになっている。信託銀行を通じての間接保有のため株式名簿に記載されていないだけ。
2016年3月末でのGPIFと日銀の株式保有額は「約39兆円」となり、2011年3月末に比べ約25兆円増えた。このため「この5年で日経平均株価は約7割上昇し、株価の押上効果が大きい」(日本経済新聞)と伝えるとともに「日銀が上場投資信託(ETF)を年間6兆円買えば、日経平均株価を2000円程度押し上げる効果がある」(野村証券チーフアナリストの話)を伝えた。
蓮舫副代表は質問後、記者団の問いに「単年度の損や利益で考えられるものではないのが、直近1年で15兆の含み損が出ているので、安定的な運用でないことは事実」と指摘。
そのうえで「国民の年金だから安定運用という説明を歴代自民党政権もしてきたが、安倍さんはまさにカジノのように株に投資をする。当然株価が上がる。問題は出口だ」と提起。
蓮舫副代表は「国民から株式投資をやめてくれという声が多くなった時、出口をどのようにするのか。株価は当然暴落する。そういう部分ではずいぶん、国民の年金保険料を自分の政権運営維持のために使っておられるのではないか」とも述べ、出口を真剣に考えなければならない旨、提起した。
また、収入が年金のみの夫婦(夫65歳、妻60歳)では暮らしていくのに月5万5000円足りなくなり、30年では2000万円足りないとの金融審議会の試算についても「国民年金だけで暮らしているお二人は政府試算の19万円よりはるかに少ない11万円だから、その方たちの足りない不足額はもっと広がる。どうしてそういう、生活が苦しい、そしてこれから年金をもらう年齢までに達していく若い子たち、非正規で頑張っている人たちに、お金を貯めろと上から目線でいうことができるのか、立憲民主党の考え方とは立ち位置がまったく逆だということが明らかになった」と強調した。(編集担当:森高龍二)