中国は、今期2019年からNEV(New Energy Vehicle/新エネルギー車)規制を導入した。中国国内で自動車を販売するメーカーは、一定の比率でNEVの生産・販売を義務付ける規制だ。ところが、その規制を修正・変更する案件が浮上してきた。
伝わってきた修正案では、ハイブリッド車(HV)を中国国内で100万台生産するメーカーには、2万台のEV生産が義務づけられていたこれまでの規制を大幅に改め、7割も少ない約6000台のEVの生産でOKになるという。
一方、ガソリン&ディーゼルエンジン車の場合には100万台の生産に対して2万台のEVの生産が必要なこれまでの規制から、4割以上多い約2万9000台のEVの生産が必要になるというのである。自動車行政を担う中国・工業情報化省が政策草案(修正案)を公表した。
ガソリン車と同じ立場にあったHVを事実上「低燃費車」と位置付ける修正で、ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車など化石燃料で動く内燃機関車よりも優遇する。つまり、HVを排除してきた中国がHV優遇策に方針を変更するということだ。
これまで「HV外しで、電気自動車(EV)だけを推進する」とメディアが報じてきた中国の方針が一転、「HV推薦」に転換するというわけだ。NEV(New Energy Vehicle/新エネルギー車)規制が変更されることで、内燃機関車に対する規制はより厳しくなる。この修正案が決定すれば、実質的なHVの優遇策となる。これが自動車メーカーにどのような影響をもたらすのだろう。
これまで中国は、HVシェア拡大がなければ、企業平均燃費(CAFC)規制をクリアできないというのが本音だった。が、HV生産技術では日本車に歯が立たない。でもEVなら優位に立てるかもしれない。そこで、中国自動車産業をEV生産で振興し、同時に都市部の大気汚染対策も進めようと中国は考えていた。
ところが、助成金を投入してまで推進したEV振興政策だが、その割に販売は伸びない。EVの技術も期待したほど高まらないし、充電インフラの整備も進まない。一方で、CAFC規制は待ったなしだ。
中国はEVで海外勢から国内自動車産業の巻き返しを狙い、環境規制も強めてEVシフトを進めてきた。だが、充電設備や航続距離の問題で一般消費者への浸透にはまだ時間がかかる。待った無しのCAFCなどの環境対策もあり、HVもひとつの対応策と位置づけたとみられる。
英IHSマークイットによれば2018年のHVの世界生産台数は229万台(除く簡易型)だった。トヨタとホンダのHV販売台数は合わせて200万台超で日本勢2社が圧倒的に強い。トヨタは4月にHVの特許無償開放を発表しており、ハイブリッドシステムそのものの販売も強化する。中国市場でHV販売拡大の可能性は大いに高まった。(編集担当:吉田恒)