今世紀末は灼熱地獄? 国家の垣根を越えて地球環境の改善に取り組む企業CSR

2019年08月04日 12:21

画・2019年10月より保育料無償化スタート。保育士の待遇はどうなる!?

森林の回復に対する取り組みは、森林の減少を食い止め、地球温暖化に歯止めをかけることはもちろん、災害対策としても非常に効果的だ

 6月に開催された大阪サミットでも最重要議題の一つとして取り上げられた環境問題。気候変動に関する政府間パネルIPCCが発行している「IPCC第5次評価報告書」によると、今世紀末までの世界平均地上気温の変化は0.3~4.8℃と、恐ろしい予測が発表されている。もしもこれが現実となれば灼熱地獄だ。健康障害や熱波による死亡や疾病の増加、水資源不足や食糧危機、生態系への影響など、人類の存続にも大きな影を落とすことになりかねない。

 地球温暖化の最も大きな影響を与えていると考えられているのが、二酸化炭素の排出量だ。産業革命以降、化石燃料の使用が増え続け、それに伴って二酸化炭素濃度も上昇。そこに加え、昨今の森林の減少などが拍車をかけている。これらの要因に対して、早急な改善が叫ばれる中、大手企業を中心に、環境問題に取り組むCSR活動の重要性も増している。

 例えば、国内最大手の通信会社であるNTTドコモ では、1999年から自然環境保護活動の一環として「ドコモの森」という定期的な森林整備活動を実施している。林野庁の「法人の森林」制度と社団法人国土緑化推進機構の「緑の募金」制度などを活用し、下草刈り、枝打ち、遊歩道作りなどの森林整備活動を行うこの「ドコモの森」は2018年3月時点で全国47都道府県49ヶ所に設置が完了。その広さは190haにも及ぶ。

 世界最大手のタイヤメーカーであるブリヂストンも、地球環境保全への貢献を目的に、早稲田大学との産学連携プロジェクト「W-BRIDGE」を展開している。同プロジェクトでは、インドネシアにある自社グループのゴム農園周辺で火事等により消失し、荒廃した国有林の回復を現地の大学や自治体とともに行い、パラゴムノキと昔から自生していた樹木の混交林として造成したり、パラゴムノキが成長するまでの間は、イネやマメなどの農作物を栽培することで、生物多様性に配慮しつつ、コミュニティにとって経済的に価値の高い森林づくりを行うなどしており、森林回復と地域住民の生活向上の両立という社会課題を解決する先進的なモデルとして注目されている。

 ミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場も、1999年からネパールでの海外植樹活動を実施している。これは、同社の企業理念である「自然との調和」に基づいて20年間にわたって継続して行われている活動で、これまでに延べ46万本を超える植樹が行われているという。また、植樹活動のスタッフは、自社の社員だけでなく、地元のインターナショナルスクールの教師や生徒、地元のフォレストコミュニティを巻き込んでの、総勢100名体制の大所帯で行われていることからも、地元民からも広く受け入れられていることが分かる。

 森林の回復に対する取り組みは、森林の減少を食い止め、地球温暖化に歯止めをかけることはもちろん、災害対策としても非常に効果的だ。山田養蜂場の植樹に参加した在ネパール日本大使館の西郷正道特命全権大使も、防災・減災の観点からも植樹は有効であり、こうした取り組みが、住民の安全確保、ひいては国家間の友好関係にも繋がると述べている。

 企業の価値は株価や資産状況だけで判断するものではない。CSR活動は数字には表れにくいが、とくに環境問題に対する活動に目をやれば、普段は見えにくい企業の姿勢や理念が見てとれる。多角的にその企業を把握する良い材料にもなるのではないだろうか。 (編集担当:今井慎太郎)