香港の混乱が長期化している。香港では6月、「逃亡犯条例」改正を巡り100万人規模のデモがあり、8月には香港国際空港が閉鎖される事態にまでおよんでいる。9月には行政長官が正式に改正案の撤回を表明したものの、その後も抗議活動は続いており、一部には暴徒化する動きも出てきた。
こうした混乱の中で香港への訪問旅客数が10%以上も減少したとの報道もあり、経済への影響も徐々に出始めているようだ。中国は日本の貿易の中で米国と並び大きなシェアを持つが、その少なくない部分が香港経由だと言われており、長期化する香港の混乱が日本企業の業績に悪影響をおよぼすことが懸念され始めてきている。
1日、東京商工リサーチが自社の保有するデータベースを用い香港に進出している日系企業の状況を調査した結果を公表している。レポートによると香港に進出している企業は1688社で拠点は2288カ所となっている。
2003年に中国と香港は経済緊密化協定を締結しており、現地従業員の雇用や法人所得税の納付などで一定条件を満たすと香港に進出する外資系企業は中国国内でのビジネスにメリットを得ることもでき、こうしたことを背景に香港には日系企業が多数進出している。
進出企業を産業別にみると、卸売業が1308拠点で全体の57.17%と約6割を占め最多となっており、大手商社、電機メーカー、食品会社などの有力企業が香港を拠点として営業展開している模様だ。レポートでは「日系企業は香港を足場にしてアジアのメーカーやアッセンブリ業者への開拓を展開している」と見ている。
次いで多い産業はサービス業の159拠点、構成比6.95%、運輸業の127拠点、5.55%、金融・保険業103拠点、4.50%と続き、混乱による営業見合わせなど事業への影響が大きいと懸念される小売業は59拠点、構成比2.5%にとどまっている。
さらに細分化した業種別でみると、卸売業の耐久消費財が908拠点、構成比39.6%で最多、次いで卸売業の消耗品400拠点、17.4%、物流や旅行会社などの輸送に付帯するサービス102拠点、4.4%などとなっている。
レポートでは「抗議活動の長期化で旅行者の減少や香港への投資減退が懸念されている。香港経済だけでなく香港を通じたアジア全体との取引停滞にも繋がりかねず、香港の政情にはまだ目を離せない」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)