秋の消費税増税を控えて景況感の推移に注目が集まっている。6月の月例報告では政府は引き続き緩やかな景気回復が続いているとしたものの、弱含み傾向が輸出・生産など各方面で見られることもまた認めている。
今年に入って各種景況指標は景気腰折れを予兆させるものが少なからず出てきていることは事実だ。しかし、その一方でIT投資をはじめとする設備投資や再開発計画の全国的広まりなど景気腰折れの可能性を薄める材料も見られる。
これまでの景気回復は世界経済の回復、特に中国経済の回復が契機となり内需へと波及したものであり、中国向け生産用機械、特にスマホ生産で必需の半導体製造装置のアジア向け輸出の増大によって牽引されてきた。しかし、米中貿易摩擦などの影響もあり中国経済の減速傾向で雲行きが変わってきているようだ。
6月19日、財務省が5月分の「貿易統計(速報)の概要」を公表した。速報によれば、5月の輸出総額は5兆8351億円で前年同月比7.8%の大幅な減少だ。これは1月の8.4%減少に次ぐ大幅な減少で昨年12月以降6カ月連続の減少傾向が続いている。一方、輸入は6兆8022億円で1.5%減と輸出入ともに減少し貿易規模自体が縮小傾向だ。差引は9671億円の赤字で4カ月ぶりに赤字に転落している。
輸出を品目別に見ると、船舶が前年同月比47.3%、自動車が3.5%増と好調である一方、減少品目では景況の牽引役とされてきた半導体製造装置が30.4%の大幅な減少、自動車の部分品も11.8%の減少と2桁減少だ。半導体製造装置の寄与度はマイナス1.1となっており、輸出全体の約2割を構成する一般機械全体では13.1%減、寄与度はマイナス2.7と極めて大きな値で一般機械の減少が著しくなっている。
輸出先別に見ると、米国向けでは3.3%増と8カ月連続で増加しているのに対し、中国向けでは9.7%減の3カ月連続減少、香港を含むアジア全体(中国を除く)では12.1%減で7カ月連続の減少となっている。
半導体製造装置を見ると、中国向けでは27.5%の減少、アジア向けでは40.5%の減少となっており、一般機械全体では中国向けが17.1%の減少、アジア向けが21.5%の減少となっている。減少の寄与度で見ると中国向けが4.4、アジア向けが4.5となっており、半導体製造装置を中心とする一般機械が輸出縮小の主要因のようだ。
この背景に米中貿易戦争があるとすれば、米国向け輸出増加へのチャンスだとも指摘されたが、中国、アジアを含めたトータルではマイナスで作用しているようだ。(編集担当:久保田雄城)