住宅ビジネスの新たな形として、注目を集めてきた工務店のネットワークシステム。エネルギー問題を解決する電力の自給自足タイプの住まいが主力商品となろうとしている市場で、このビジネスモデルはどのような形で生きているのだろうか。
日本における住宅ビジネスは全国に直営の営業所を持つ住宅メーカー、フランチャイズ、地元に根付く工務店などの形に分類され、これが長きにわたって市場を形成していた。だが、新たな住宅販売のビジネスモデルを模索していたアキュラホームは、1998年「アキュラネット」を発足、全国の工務店をネットワークで結び、低コスト・高品質の住宅を一律で供給するシテムを開発した。このネットワークの最大の特長は、コスト算出方法や最先端の技術は共有しながら、地元に密着した工務店が個性を出せるよう、建材の調達や設計はある程度自由に行えることだ。2005年にはネットワークの名称を、NAHB(全米ホームビルダー協会)をリスペクトしながら目標にする意味を込め、「JAHBnet(ジャーブネット)」と改めた。現在は全国で400社が加盟しており、木造住宅の供給棟数がFC・VC(フランチャイズ・ボラタリーチェー)部門で6年連続の1位(住宅産業研究所調べ)を達成している。
一方、震災以降、エネルギー問題に対する消費者の意識は劇的に変わり、電力においては自給自足が可能な設備を住宅に求める傾向となり、その結果、太陽光発電システム搭載の住宅はこれから普及期を迎えようとしている。また、燃料電池も低価格が進めば、当然普及していくだろう。そして、住まいのモデルもさらに進化した「スマートハウス」がいよいよ登場してきた。
現在、この電力の自給自足を実現するための付帯設備である電池等のコストが高いため、導入に踏み切れない消費者も多いと思われるが、ローコストで住宅を供給できるシステムを使える「JAHBnet」加盟店は、この問題を解決するべく低価格のエコ住宅をどんどん開発している。
愛知県の「オカザキホーム」では、9月から太陽光発電システムと燃料電池のW発電に蓄電池をプラスした『めぐるecoW』を販売。佐賀県の「クレセントホーム」も同じ商品を10月より販売開始し、普及を目指すためのモデルハウスも建設した。また、静岡「福工房」では、蓄電池を搭載したショールーム『木の家体験工房』をオープンし、防災関連の情報発信を行う。これらは、いずれも「アキュラホーム」が開発した最新設備搭載住宅がベースとなり、自社のオリジナルティが加わったモデルやショールームだ。
このような最先端の技術を駆使した住まいは、発電量や仕様も住宅メーカーによってまちまちだが、普及に繋げるためには、まずローコストの実現という高いハードルがある。実際「JAHBnet」は2003年に太陽光発電システム搭載の住宅「陽向家(ひゅうが)」を低価格で発売し、大ヒットさせた。当時、太陽光発電システムの普及に貢献したように、さらに進化した創エネ住宅を広く浸透させるのも、低価格提供が可能で地元に強い「JAHBnet」のようなビジネスモデルなのかもしれない。(編集担当:加藤隆文)