世界的に自動車企業のエキサイティングな再編が進行している。巨大自動車企業グループであるFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)とグループPSA(プジョー・シトロエン・グループ)が対等合併する。今般、正式に合意に至ったと発表された。これにより生産台数で世界4位、売上高で世界3位となる、巨大自動車製造グループが誕生する。
FCAは伊の自動車コングロマリット、フィアット社と米クライスラー社を軸とし、フィアット傘下にアルファロメオ、マセラティ、クライスラーがジープなどのブランドを抱える。いっぽうのPSAはプジョーやシトロエン、DS、オペルなどのブランドを傘下に持つ。この両グループが統合し、販売台数は年間870万台、売上は1700億ユーロ(約20兆7300億円)になる見込みだ。これはフォルクスワーゲングループ、トヨタグループ、ルノー日産・三菱自アライアンスに次ぐ自動車グループの誕生だ。
ただ、前途は多難だ。PSAとFCAともに弱点は世界最大の自動車市場である中国にある。自動車業界のアナリストによると、PSAは競争力のあるSUVなどが十分に揃っていない。また、両社ともに、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などの、中国市場で今後有望視される電動車種の品ぞろえが不足している。新たな連合は今後も、この弱点を解消する目的で、自動車業界に拘らないM&Aが必要だとする分析もある。自社の体力が落ちないうちにである。
今回の統合は、対等合併として法的な拘束力のある覚書が交わされたという。その意義は「持続可能なモビリティ新時代を形作る挑戦に応じるため、広範囲にわたる革新的な能力を結集するものである」と、プレスリリースに明記されている。
統合の完了には12~15月かかるものとされていて、グループ会長は、現FCA会長のジョン・エルカン氏、グループCEOはカルロス・タバレス氏が務める。
いっぽう、いすゞ自動車とスウェーデン・ボルボ(VOLVO)が、中・大型商用車分野で業務提携すると発表した。提携の第1弾として、ボルボの100%出資会社であるUDトラックス(旧・日産ディーゼル)をいすゞが買収することで合意した。2020年末までに手続きの完了を目指す。取り敢えず日本の2社が統合するわけだ。深読みかもしれないが、ボルボの単なるUDトラックス売却で終わらなければ良いが、という懸念は残る。
この買収後も当面はUDトラックスのブランドは存続するが、いすゞとUDトラックスの車両で設計・開発手法や部品などを共通化し、コスト削減を進める。ただ、いすゞ社長の片山正則氏は東京都内で開いた会見で、「両社の日本における生産体制の再編は、現時点では考えていない」とした。
時期を同じくして日本自動車工業会会長でトヨタ社長の豊田章男氏が、工業会会長として会見し、「業界で起きている100年に一度の変革期では、まだまだ企業同士が手を結んでいく必要がある。自動車業界という枠を超えた他産業をも視野に入れた、企業再編が一層加速する」と述べた。
2020年に向けて、大きな変革が着々と、しかも静かに進行している。残された牌は、日本ならホンダ、米国はGM程度で、それ程多くない。(編集担当:吉田恒)