年末年始にテレビをみていると、見慣れないCMが多いことに気づく。中には、社名だけで、どんな業務をしているのか、どんな商品やサービスを扱っているのかなど、一切わからないCMも多い。
これら「謎の企業」の正体の多くは「BtoB」企業だ。「BtoB」とは、一般的に「BtoC」と呼ばれる企業のように消費者(Customer)向けの商品やサービスではなく、法人(Business)向けのビジネスを展開している企業のことだ。「BtoC」企業と違い、テレビで何億円もの広告費をかけて一般消費者に自社の宣伝を行なっても費用対効果は非常に薄いため、普段のテレビ画面にCMを流すようなことはほとんどない。
では、どうして年末年始になると、「BtoB」企業のCMが増えるのだろうか。
一つは、年末年始やお盆などの時期は、普段テレビを観ない若者層や経営者、投資家などもテレビを観る機会が増えるからだろう。BtoB企業がブランドイメージの向上や定着を図る上で最も効果が高い時期なのだ。
例えば、2018年のお盆時期や、2019年の年頭にはAGC株式会社〈5201〉のCMが大量に投入された。同社は18年の7月に「旭硝子」から社名変更を行っており、CMによって新しい社名を周知するための目的が大きいと思われる。
また、年末年始になるとCMを流している村田製作所〈6981〉は、会社紹介のほか、社員のインタビュー、恋愛短編ドラマ風のものなど、学生をターゲットにしたものが多い。これは、同社のCMの目的がリクルーティング活動にあるからだ。学生本人だけでなく、彼らが帰省して家族でテレビを見ている時、同社のCMがテレビから流れてくれば、イメージは大きくアップするだろう。また、技術系のBtoB企業は、その具体的な活動や成果が世間では見えにくいため、新卒社員などが帰省した際に家族で目にすれば、親も安心できるはずだ。
そんな中、この年末年始には、半導体メーカーのローム株式会社〈6963〉も19年振りにテレビCMを投入すると発表した。同社によると、顧客観点に立ち、常に新しい価値を創造するために、まずはいつも社員が活き活きと活躍していることを強く意識しているといい、CMを実施することで、多くの人にロームを知ってもらい、社員のモチベーション向上に繋げることが目的だという。
同社のCMは2019年12月27日~2020年1月13日の期間で放映されており、「半導体の技術で、夢を、未来をカタチに。」という分かりやすいキャッチコピーで15秒と30秒の2種類が用意されている。
監督には、ライザップ(峯岸みなみ篇)や日本電産「私はモーター」など数多くのCMをはじめ、ミュージックビデオなども手掛ける、新進気鋭の映像ディレクター・箱守惠輔氏を起用。CMタイアップ曲には若者の間で人気急上昇中のアーティストOfficial髭男dismの「115万キロのフィルム」を採用するなど、19年振りとなるCM制作に大きな熱の入れようだ。
ここに挙げた3社の他にも、多くのBtoB企業がCMを展開している。普段、目や耳にする機会が少ない企業ばかりかもしれないが、CMを流せるということは、それだけ優良企業という証でもある。この機会に社名ぐらいは覚えておいても損はないだろう。(編集担当:藤原伊織)