東京五輪で始まる日本初の本格BRT、「晴海―虎ノ門」を走る純国産連節バス

2020年02月02日 11:41

Articulated bus

いすゞ自動車と日野自動車が共同でハイブリッドをパワートレーンとする連節バスを開発。写真は、いすゞブランド車「エルガデュオ」

 「連節バス」とは、路線バス2台を蛇腹でつなげたような長いボディのバスだ。1998年から千葉・幕張地区で、一般の路線バスとして導入されている。富士重工業の車体とVOLVOのエンジンを組み合わせたバスで、現在も幕張本郷と海浜幕張を結ぶバス路線で走っている。

 幕張地区のほかに路線バスとして連節バスが導入されたのは2005年、神奈川県藤沢市、慶應大学湘南藤沢キャンパスへ学生の通学をスムーズに行うために、湘南台駅と慶應大学SFCを結ぶ路線で、独ネオプラン社製の「セントロライナー」が走っている。

 日本で、この連節バスが導入されたのは1985年のつくば万博で、会場とJR常磐線臨時駅間を100台の連節バスを運行させた。車両は今も幕張で走る富士重+VOLVO製で、18mもある全長が道路交通法・車両法(全長12m以内)に違反するため万博では特例として走った。同じく、幕張や藤沢の例は、走るルートや車線も申請して許可を受けた、あくまで特例処置なのだ。

 いっぽう、大型二種免許が必要なバス運転士不足が顕在化している。厚生労働省や警察庁のまとめによると、2008年に大型二種免許取得者は110.6万人だったが、2018年に89.6万人にまで減少。同時に大型バス運転士の平均年齢は46.8歳だったものが、51.2歳にまで高齢化した。そこで、注目されているのが連節バスだ。

 東京・町田市でも2012年5月から神奈川中央交通と協働で連節バス「ツインライナー」を運行する。この連節バスの導入により、同じバス運行回数を約23%少なくでき、渋滞緩和と二酸化炭素の削減も見込めるとしている。

 さらに東京都では都交通局が虎ノ門と晴海5丁目のオリンピック選手村の間で連節バスを運行させる予定だ。東京都都市整備局によるとオリンピック終了後の「選手村」跡地・総戸数5632戸の巨大マンションタウン「晴海フラッグ」と新橋・銀座・虎ノ門?東京駅を結ぶ専用バスルート「BRT(Bus Rapid Transit)計画」でも導入される予定だ。

 新たに生まれる巨大マンションタウン「晴海フラッグ」は、公共交通未整備エリアであるのが現状。街区内で運用される鉄道駅は徒歩20?30分の距離にある都営地下鉄大江戸線「勝どき駅」だけであり、公共交通整備が課題なのだ。

 そこで熱い視線が注がれたのが連節バスだ。しかしながら、注目を集める連節バスだが、これまで導入されたハードウェアはつくば万博で使い幕張メッセ周辺を走る富士重+VOLVO製以外、メルセデスやネオプラン、VOLVOといった輸入車ばかり。輸入車は日本の法規に合わせた構造変更や輸入コストが膨大で約1億円/台が普通だった。

 そんな市場に参入を進めた国産メーカーが、いすゞ自動車と日野自動車だ。両社は2017年に共同でハイブリッドをパワートレーンとする連節バスを開発すると発表。昨年5月に遂に発売に漕ぎつけた。いすゞのブランドを冠したモデルが「エルガデュオ」で、日野ブランド車が「ブルーリボンハイブリッド・バス」である。

 日本の交通インフラに適した標準車両サイズは全長17.99m×全幅2.495mで、定員120名。メカニカルな特徴は、モーターのみによる発進も可能なパラレル型ハイブリッドシステムに加えて、いすゞや日野の大型観光バスのために2018年モデルから導入された「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」が、路線バスのために初搭載。ドライバーに急病などが発生した際、乗客やドライバーが非常ブレーキスイッチを押すことで、自動で減速、停止する緊急停止システムだ。

 さらに、路面上の誘導線をカメラで認識し、自動操舵、自動減速によりバス停へ誘導する「プラットホーム正着制御」や、自動車専用道路において先行車との車間距離を制御する「協調型車間距離維持支援システム(CACC)」といった技術にも対応している。

 これで価格がオプションレスの標準モデルで約8800万円/台と輸入車に較べて1割以上リーズナブルに仕上がった。

 なお、運転士の運転免許は大型二種免許が必須だが、貨物用トレーラーのように切り離せないため、けん引免許は不要。しかし、右左折時や後退時にトレーラーの運転と同等の技能が必要であり、従前の事業者は、けん引免許取得者を乗務させているという。大型二種免許+けん引免許保持者、なかなか高いハードルといえる。(編集担当:吉田恒)