かねてより今年のオリンピックの反動による景気後退が懸念されてきた。内需を牽引する建設業界ではオリンピックや都市部を中心とする大規模再開発などの需要により好景気が続いている。
最大の不安は五輪後の反動だが、業界内の見通しでは建設投資はそれほど落ち込まないのではないかという声も少なくない。理由は、五輪により延期されていたプロジェクトが山積みでインフラ整備や大規模再開発といった官民の建設投資が2020年以降もめじろ押しで建設需要が落ち込む見込みが今のところないからだ。
先月下旬、矢野経済研究所が建設市場について分野別の市場動向、将来展望についてレポートを公表している。レポートは政府統計を基に住宅、商業施設、オフィス、ホテル、それぞれの分野ごとにその現況と今後の展望について分析している。
住宅部門では17年度の着工戸数が94万6396戸で前年比は2.8%減と3年ぶりの減少となっている。マンション発売戸数は8万256戸で前年比3.7%の増加だ。今後については19年度について持家と分譲戸建ては駆け込み需要後の反動により減少傾向と見込まれるものの減少幅は縮小し、分譲マンションは横ばいの見通しだ。
商業施設は17年度の着工面積が553万㎡で前年比1.5%の減少だ。しかし、20年以降も訪日外国人を狙った設備投資は続くと予想されている。インバウンドに係るモノ消費は一巡したが今後はコト消費に関連した市場の拡大が見込まれている。
オフィスについて見ると、17年度は横ばいであったものの18年は25万坪となっており、20年は17年ぶりに30万坪を上回る見込みだ。空き室率は増加し、賃料は高止まり傾向だが、大量供給を控える都心部に対して地方では大規模供給が増加し需給逼迫はしばらく続く見通しだ。
ホテルは18年3月時点で1万402軒と5年連続の増加、市場規模も拡大傾向だ。ホテルは好調なインバウンド需要に支えられ今後も稼働率、業績が向上すると見込まれている。国際観光の増加は世界的な流れで今後も確実に増加するとみられ、オリンピック以降も需要は拡大傾向で推移すると見込まれている。
世界経済の減速傾向の中、景気動向の不透明感が高まっている。業種によっては既に後退局面と判断しているところもあるようだが、建設業界に関してはしばらく好調に推移する見込みのようだ。(編集担当:久保田雄城)