今さら聞けない、電気自動車のメリットとデメリット。本当にお得なの?

2020年03月15日 10:42

ev

EVに乗るメリットは何だろうか。燃費が良いとはいうものの、本当に回収できるのだろうか

 今や、急速な勢いで普及しつつある「電気自動車」(EV)。でも、実際のところ、EVに乗るメリットは何だろうか。

 ガソリン車に比べると車体の販売価格も高いので、地球環境に優しいというだけでは、なかなか手が出ない。燃費が良いとはいうものの、本当に回収できるのだろうか。充電設備もまだまだ普及段階。不便には感じないだろうか。そんな不安を抱えて購入を見送る人も多いのではないだろうか。

 まず、気になる燃料代はどれだけの節約になるのだろうか。例えば、 1000キロメートルの走行で比較した場合、ガソリン車で1リッターあたり16キロメートルの走行距離、レギュラーガソリンの価格が1リットル141円と仮定した場合、燃料代は8812円となる。

 一方、EV車は1kWhあたり6キロメートルの走行が可能と仮定し、電気料金が割安になる夜間に充電することを想定して1kWhあたり13円の電気代がかかるとした場合、充電代は2166円となる。およそ6000円の節約となるわけだ。もちろん、電気料金は契約している電力会社によって異なるし、ガソリン代も変動する。充電する時間帯などによっても差は生じる。そして、この節約を多いと捉えるか、少ないと感じるかは、自動車の利用頻度などによっても違ってくるだろう。

 また、EVの場合は「エコカー減税」や「グリーン化特例」による減税が適用されるのも大きな魅力とされている。さらに、購入後に所定の書類を提出することで「CEV(Clean Energy Vehicle)補助金」と呼ばれる政府の補助金を受けることもできる。これらを上手く利用すれば大きな節約となるだろう。

 では、デメリットはどうだろうか。

 消費者にとって一番懸念されるであろうことは、充電設備の問題ではないだろうか。公共の充電ステーションが増えてはいるものの、ガソリンスタンドに比べるとまだまだ少ないのが現状で、急速充電のできるところとなると尚更だ。また、自宅で充電するためには、保管場所に充電設備が必要になる。無ければ、設備工事を行わなくてはならない。

 さらに航続距離の問題もある。一回の充電で約400km走行できると公表しているEVもあるが、充電ステーションの少ない現状では、長距離ドライブや山間部などへのドライブの場合はとくにバッテリーがなくならないよう、最新の注意が必要だ。

 そこで、充電設備の普及もさることながら、重要なのが「いかに電力を効率良く利用するか」ということだ。今よりもさらに電力効率が良くなれば当然、自動車の燃費にあたる電費も良くなり、走行距離も伸びる。少々遠出をしても充電切れの心配も少なくなるだろう。

 その電費向上に大きく貢献すると期待されているのがSi(シリコン)とC(炭素)を化合させた「SiC(炭化ケイ素)パワーデバイス」と呼ばれる電子部品だ。

 SiCパワーデバイスを一言で説明すると「大電力を効率良く変換する」のに適した電子部品。EVの要ともいえる車載充電器やインバータで使用され、「高効率化」と「小型化」に貢献する。例えば、インバータを例にすると、EVの駆動用モータを回転させるためには、頻繁な電力の切り替えが必要となるが、SiCパワーデバイスはこの際に発生する電力損失を、現在主流のSiパワーデバイスに比べて大幅に低減できる。これにより、同じバッテリーサイズでも航続距離を伸ばすことが可能となり、「高効率化」に貢献する。また、電力の変換効率が良くなると、発生する熱も少なくなるため、冷却機構などを含めて、インバータ全体の「小型化」にもつながる。インバータの小型化は軽量化にもつながるため、これも電費の向上に貢献するのだ。

 SiCパワーデバイスの分野において、日本の企業ではローム〈6963〉が世界的にも知られている。同社は、2000年からSiCパワーデバイスの基礎研究をスタートさせ、2010年には国内で初めてSiCショットキーバリアダイオード(SBD)を量産化。その後、世界で初めてSiC MOSFETの量産化をスタートさせるなど、業界に先駆けた技術開発を行っており、EV市場の拡大に伴って、グローバルでシェアを広げているため、今後の展開が期待されている。

 頻繁に自動車を利用しないような生活の場合、これまでだとEVは少し高い買い物だったかも知れない。しかし、先述したようにEVをめぐる技術は日進月歩の開発が進められており、需要の増加に伴い、コスト面も徐々に改善されていくだろう。ガソリン車を逆転する日もそう遠い未来ではないかもしれない。(編集担当:藤原伊織)