オフィス4割削減でも、経営効率3割アップ? ニューノーマルな働き方を推進する企業の情熱

2020年07月24日 10:12

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日本国内では一度は落ち着きかけた新型コロナ禍が、再び猛威を振るい始めている

 日本国内では一度は落ち着きかけた新型コロナ禍が、再び猛威を振るい始めている。とくに東京や大阪、京都では緊急事態宣言解除後の感染者数の最多数を更新し続けており、東京都では半数近くの感染経路が不明という状況だ。緊急事態宣言後にPCR検査の体制が整ったことで検査数自体の分母が増えたことで、感染の発覚が増えたことも原因の一つといわれているが、いずれにしても、陽性患者の数はそれだけ増えているのは事実だ。

 また、日本時間の20日午前3時の時点で発表された米国のジョンズ・ホプキンス大学の報告では、新型コロナウイルスの感染者は世界全体で1434万8475人にのぼり、同ウイルスが原因とみられる死亡者は60万人を突破している。日本政府が再び緊急事態宣言を発令するかどうかは注目されるところではあるが、どちらにしても、まだまだしばらくの間は、感染に警戒しつつ、新しい生活様式のもとで経済活動を取り戻していく「ウィズコロナ」の時代が続きそうだ。

 そんな中、すでに「ウィズコロナ」時代に適応した新しい体制に切り替えて、この難局を柔軟に乗り切ろうと動き出している企業も現われている。

 例えば、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームは、在宅勤務とIT化の推進により、全国の都市部にある同社のオフィスを3年かけて7割再編すると発表した。具体的には、新宿本社オフィス面積を4割削減するとともに、全国の都市部オフィスを郊外型のオフィスへと移行させる予定だという。

 同社は、住宅業界の中でもいち早く新型コロナの感染防止対策に乗り出しており、4月9日には、本社及び全国の営業拠点合わせて100か所以上を全て休業とし、社員は原則在宅勤務とし、営業所での接客・打合せ等を停止する方針を打ち出している。その結果、5月の集客は前年比で92%ダウンという大幅な落込みとなったものの、オンライン会議システムを活用した独自の大規模ライブイベントを配信したり、無人のモデルハウスとして来場したお客をロボットが案内するほか、遠隔地のモデルハウスも案内できる最先端のスマートモデルハウスを実現するなど、非対面でのリモートワークを推進するなどし、徹底した感染症対策を講じながらも前向きな事業を展開してきた。多くのメディアからも取材を受け、顧客からも高い評価を得ている。そしてなんと、このコロナ禍の厳しい状況下でありながら、今期は過去最高の売上を予測し、営業利益は計画を上回る見込みだというのだ。

 同社ではオフィス再編に際して、社内外への感染被害抑止と社員の安全安心を最優先に考えての施策であるのはもちろんのこと、再編を推進することで、経営効率3割アップを目指し、その分を商品価格を抑制することで市場に還元していくと、どこまでも前向きな姿勢を見せている。

 また、2017年に総務省が進める「テレワーク先駆者百選」で総務大臣賞を受賞し、昨年は厚生労働省による令和元年度「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」で優秀賞も受賞している大同生命保険株式会社では、2013年度にはすでに営業担当者全員にタブレット端末を配布、2014年度からは本格的な在宅勤務制度を導入するなど、早くからテレワークを導入してきたこともあり、このコロナ禍への対応も迅速だったようだ。同社では、在宅勤務の制限も昨年度から大幅に撤廃している。同社のスタイルを見習おうとする企業も多いのではないだろうか。

 感染症対策と考えると、大掛かりな改革はなかなか進めにくいかもしれない。でも、アキュラホームのようにニューノーマルな働き方を前向きに捉えたり、大同生命保険のようにコロナ対策だけが目的ではなく、今後の働き方改革のきっかけと考えれば、それぞれの企業に合ったやり方も見えてくるのではないだろうか。マスクをつけて3密を避けるだけがコロナ対策ではない。今後、新型コロナ以外にも未知のウイルスや感染症が発生しないとは限らない。大企業だけでなく、中小企業や個人事業者においても、どんな不測の事態が起こっても柔軟に対応でき、経済活動が維持できるように、この機会にニューノーマルな働き方をしっかりと考え直したいものだ。(編集担当:藤原伊織)