6月下旬から始まった日本の新型コロナウイルス感染症の第2波とも呼べる新規感染者の拡大は7月下旬にピークアウトし重症者の増加もピークに達し落ち着きを見せてきたようだ。今回の波はPCR検査を増やしたためという側面も強く、また医療体制の拡充も行われており重症者の数も比較的少なく4月のような混乱は起こらなかった。
一方、欧州諸国でも7月下旬より第2波と呼べるような感染者の拡大が始まっており今のところピークアウトの兆しは見えない。日本においても第2波では緊急事態宣言が出されなかったが、欧州でも同様に大規模なロックダウンを行う気配はないようだ。日本と同様に医療体制の拡充や経済への配慮がその背景であろう。
3日に日本総合研究所が「欧州経済展望」を公表。コロナ禍での欧州経済の現況と先行きについてレポートを発表している。
レポートによれば、ユーロ圏の6月の小売売上数量は前年比1.5%の増加と、新型コロナ流行前の水準にまで回復している。欧州でも外出自粛ムードは続いており、その影響でガソリンが依然として不調であるものの食料品以外の小売売上はプラスに転化、オンラインショッピングの活用などにより消費の回復が先行している。
製造業も4月を底に回復傾向で、深刻だったイタリアでも6月の製造業受注と生産が2カ月連続の大幅改善となっており、流行前の9割の水準まで回復している。ただし、ユーロ圏の輸出は4月に底打ちしたものの世界経済全体の停滞やユーロ高の影響を受け回復速度は鈍いものとなっている。
回復傾向の欧州だが7月中頃より感染者数の増加が再び始まり第2波と呼べる状況になっている。このためユーロ圏の8月の景気指標は製造業・サービス業で前月に比べ減速となった。しかし、今のところ各国とも大規模ロックダウンはなく、部分的なロックダウンにとどめる対応で、スペインやフランスでもテレワークの活用などにより職場への人出は一時減少したものの小売・娯楽への人出は減少しておらず個人消費は底堅く推移している。この背景にはやはり医療体制の拡充とWHOによる第2波はロックダウンなしで対応可能という表明があるようだ。
個人消費が再び大きく落ち込む事態は回避される見通しではあるものの回復ペースは緩慢で外需の低迷もあり、ユーロ圏の実質GDPは通年でマイナス8%台の大幅なマイナス成長になる見通しだ。(編集担当:久保田雄城)