コロナ禍で東京都から人口が流出している。東京都の発表によれば、新型コロナのリスクを避けるため、転入の見合わせや都からの転出が増加し、6月より転出超過の状態が続いている。しかし一方で、企業の本社が多く存在する東京23区では、コロナリスクを回避するため職住接近を志向した社長の流入が増加しているようだ。
11月30日、東京商工リサーチが自社保有の企業データベース(約390万社)から2020年7月末時点の社長の居住地を抽出しランキングにまとめた「2020年全国、社長の住む街調査」の集計結果を公表している。
これによれば「社長の住む街」トップは東京都の「港区赤坂」の3454人、赤坂のある「港区」の社長比率は13.1%で、実に住人の10人に1人が社長だ。次いで2位は同「新宿区西新宿」2878人で、新宿駅の西側、都庁があり、また大型商業施設も隣接する利便性の高い地域だ。3位は「港区六本木」の2784人、トップの赤坂と隣接し外国人にも人気の街だ。これらトップ3はビジネス、繁華街、高級住宅街など多機能の利便性の高い街である。
ランキングが前回の17年調査から目立って上昇しているものを見ると、「港区芝浦」2370人が前回13位から7位に急上昇した。かつては工場地帯であったが、再開発で大きく変貌を遂げ、現在は東京湾を望めるタワーマンションやオフィスビルが建ち並んでいる。この他、オリンピックで整備が進んだ「江東区豊洲」が前回27位から13位へ、「中央区勝どき」が22位から14位へランクアップ。
一方、「江東区大島」は前回の11位から15位にダウン、「世田谷区成城」も15位から21位に下げた。東京23区内でも、より都心部への集中が進んでいるようだ。
地域別ではトップ10の全てが東京23区だが、市区郡別でもトップ10は東京23区が独占した。トップは「世田谷区」4万8878人、2位は「港区」の3万4111人、3位「大田区」で2万6472人となっている。社長比率では「港区」が13.1%、「渋谷区」11.0%、「千代田区」10.9%と10%を超えている。東京都以外では、14位埼玉県「川口市」1万8077人、20位千葉県「船橋市」1万3091人など東京近郊の都市が上位だ。
東京や大都市では前回と比べランク上昇が目立つが地方都市は低迷が目立つ。コロナ禍で人口の分散も指摘される一方、社長などの人材や産業の東京への一極集中は加速しているようだ。(編集担当:久保田雄城)