海自に過重負荷かけない運用と人材の確保を

2020年12月13日 08:50

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人材確保と運用面の真剣な議論を国民にもわかる形で検討することを期待したい。

 山口県と秋田県に配備計画されていた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」がブースターの落下エリアの問題や巨額費用を理由にとん挫したが、次に出た代替案は「イージス・システム搭載艦」2隻の建造だった。そもそも論から大ブレになった。

 そもそも、陸上でのミサイル迎撃システム配備の目的の主要なひとつは「海上自衛隊隊員の負担軽減」だった。これを図りながらミサイル攻撃から全国をカバーする、合わせて、政府は認めないものの、大陸側からグアムやハワイに向かうミサイルを撃墜することも含めての防衛・安保構想だった。

 「イージス・システム搭載艦」2隻での対応になれば、海上自衛隊の負担は軽減どころか逆に増える。現行でも定員割れの海自人材をどう確保するのか。人材確保から取り組まなければならない状況になる。「陸自から異動発令する考えか」と笑えない皮肉も。防衛大綱でも謳う「防衛力の中核は自衛隊員」との言葉の重みを忘れてはならない。

 石破茂・元防衛大臣も人材確保ができるのか懸念する。石破氏は「汎用性の高いイージス艦を日本海に24時間365日置いておくのは限られた資源の活用方法としては効果的ではない。海上自衛隊の負担も大きいからイージス艦を緊張の高まる南西海域に回すべく、イージスシステム(レーダー)とランチャーを陸上に配備するというのがそもそもの構想だった」とブログ発信した。

 そのうえで「今後どのように乗組員を確保するのか、自艦防護以外の能力を何処まで保持させるのか、難問は山積」と書き込み「年明けに具体的な議論を進める必要がある」としている。

 岸信夫防衛大臣は11日の記者会見でこれについて「搭載艦に係る運用構想の詳細、搭載機能、艦の設計、要員確保、こういったことに、引き続き米国政府とあるいは日米の民間事業者等々と鋭意検討を進めていきたい」と語るにとどまった。つまるところ課題を含めて詳細はこれから検討するということだ。

 記者会見での質問では、2隻なら5000億円以上かかる試算もある、と費用面での課題も投げられたが「常時持続的に、わが国全域を防護し得る態勢の構築」のために、海上自衛隊の負荷をどこまで軽くできるのか、その解決策を現場隊員らの視点で検証しなければ「厳しさを増す自衛官の人材確保を巡る環境」(岸防衛大臣)はさらに厳しくなり、期待する成果も得られなくなる。

 過重負荷は人材確保を難しくするばかりか、現役隊員らの士気をも低下させ、防衛力の強靭性に大きく影響する。人材確保と運用面の真剣な議論を国民にもわかる形で検討することを期待したい。(編集担当:森高龍二)