メキシコ、日本、インドネシア、韓国などで、世界の子どもたちに人気の高い「キッザニア」。就学前から小学生程度の児童が、数十種類前後の職業を模擬体験することができる職業体験型テーマパークだ。
そもそも「キッザニア」は1999年にメキシコで発祥し、日本では現在、「キッザニア東京」「キッザニア甲子園」の2施設が存在する。さまざまな企業が協賛しており、例えば出光興産がガソリンスタンドを、NTTドコモが携帯電話ショップを、キューピーがマヨネーズ工場を、大日本印刷が印刷会社などの職業体験パビリオンを提供している。そのような中、今年10月、メキシコで3つ目の施設となる「キッザニア・クイクルコ」に、新たなパビリオンとしてヤマハ発動機がバイクショップを誕生させた。
同社の現地法人YMMEX(Yamaha Motor De Mexico S.A. de C.V.)の協賛による同パビリオンでは、ミニバイクによる交通安全教育及び運転ライセンスの取得と、工具を使ったミニバイクの簡単な修理を体験することができる。「メキシコでは、日本の子どもたちのように日常的に自転車に乗るような習慣がありません。彼らにとっては乗りものを自分で操作すること、それ自体が大きな喜びであり、新鮮な体験として受け止められています。キッザニア・クイクルコは、幼児期からの交通教育によって事故の削減を目指した世界で初めての交通版キッザニアなのですが、ヤマハもメキシコ交通社会の一員としてその責任を果たして行きたいと思います」とYMMEXの担当者は話す。
メキシコではいま、アメリカからの廉価な中古四輪車の流入や中国製二輪車の普及を背景に、各都市で渋滞や排ガス問題が深刻化しており、同時に交通事故や運転マナーの問題もクローズアップされている。「自転車経験の少ない子どもたちに二輪車の乗車体験をしてもらい、安全運転教育を行うことは、免許の取得に交通ルールの講習や実技講習のないメキシコでは本当に大切で、意義のあることなんです」と担当者。今回、子どもたちが受ける講習も、同社がグローバルに展開する安全運転教育プログラム「YRA(ヤマハ・ライディング・アカデミー)」の基本に則った内容で行われている。
一方、バイク整備の職業体験ではヤマハの整備服に身を包み、実際に工具を使ってバイクのエアフィルターのチェックや交換などの作業を行う。
国内の大手企業が海外に現地法人を設立し、事業展開を積極的に行っている例は多く同社もその1つである。「今回のパビリオンの出展により、メキシコの子どもたちに二輪車が便利で経済的というだけでなく、楽しい乗りものなんだということを伝えることができている」と言う。現地での広告展開は様々な形があるが、同社はこうした試みにより、同国の二輪車市場が大きく広がっていく可能性に期待しているようだ。