新潟・関越自動車での大雪による車両立ち往生から鳥インフルエンザ発生による大量の養鶏処理、新型コロナ禍での陸上自衛隊看護官や准看護師ら自衛隊員の出動が、2020年は領土・領空・領海防衛という本来の「国防」以外でも相次いだ。
鳥インフルエンザで養鶏処理に対応された隊員はしみじみ「かわいそうだっだ」と。被害拡散を防ぐためとはいえ、命を絶つ作業に当たるのはイヤだったに違いない、複雑な思いだっただろう。
大規模災害に限らず局地的な自然災害でも自衛隊が駆り出されるケースは多い。国を護る、国民を守る、世界平和を護るために自衛隊は存在し、活動するが、自然災害で自治体の長から要請が出され、出動指令が出るたびに防衛任務から外れ、どこかの部隊から救助活動にあたるための隊員が調達される。国宝彦根城の屋根の草木除去まで市役所の要請を受けて行った。
しかし、出動した人数分だけ任務が減少するわけでないため、残った隊員らがこれをカバーしなければならない。関越自動車での車両立ち往生には各地の部隊から400人を超える隊員が集められた。大規模災害時には数万人が出動することになる。「自衛隊は便利屋ではない」という声が聞こえてきそう。自衛隊内部からではなく、自衛隊を理解している民間人の間からだが・・・。
現況のままでよいのだろうかとふと考える。本来の国防活動でも「宇宙・サイバー・電磁波など新領域」での任務が加わり、能力強化が求められている。宇宙防衛分野では今年5月「宇宙作戦隊」が発足し、新年度に指揮系統の「宇宙作戦群」を府中基地に編成し、防衛装備庁には宇宙事業管理班を設ける。
サイバー分野でも陸上・海上・航空の各自衛隊関連部隊から約540人の要員を集めた防衛大臣直轄「自衛隊サイバー防衛隊」を新編する。電磁波分野では「電子作戦隊」を編成し、「電子作戦部隊」を新設する。自衛隊がすべきカバー領域が本来の国防分野においても拡大し続けている。
自衛隊がカバーする分野を領土・領空・領海といった防衛、武力攻撃への対応のほかには、原子力災害や航空事故、ハイジャックやテロ攻撃といった緊急事態に限定することが必要ではないか。東日本大震災クラスの自然災害や鳥インフルエンザのような場合は例外として、自然災害の場合には、これに対応する、対応できる「大規模自然災害管理庁」のような別組織を実働部隊の編制も含めて考えるべきではないか。国土強靭化の一環として、政府には長期的な目で検討を期待したい。(編集担当:森高龍二)