日本ではAI、ビッグデータ、アナリティスクなどを担うデータ・サイエンティスト人材が圧倒的に不足している。このままでは日本は高スキル人材の不足により産業崩壊を起こすと言われてきた。2018年イギリスの人材会社ヘイズの公表したレポートでは、日本はAI技術者やデータ・サイエンティスト、IoT技術者などで企業が求めているレベルの専門スキルを有した人材が圧倒的に不足しているとして「世界一スキル不足の国」と名指しされた。同社の日本法人が19年11月に行った調査でも高スキル人材の確保が容易かどうかを示す指標「人材ミスマッチ」で、日本は調査対象34の国・地域の中で「世界最悪クラス」であった。
1月27日、矢野経済研究所が、データ分析関連人材(分析コンサルタント、データ・サイエンティスト、分析アーキテクト、プロジェクトマネージャー)の規模を調査し、現況やデータ分析関連人材職種別の動向、および将来展望を明らかにしたレポートを公表している。
レポートによれば、20年度の国内データ分析関連人材の規模は8万9800人の見込だ。各種センサーやスマートデバイス等の普及により膨大なデータを収集、分析することで、これまでにない知見を含めた課題解決方法への期待が高まっているなか、データをもとに意思決定を行い、経営に生かすデータ・ドリブン経営(データ駆動経営)を打ち出す企業が増えてきており、データ分析関連人材が注目されており、なかでもデータ・サイエンティストは最も重用される人材といわれている。
こうしたなか、データ分析関連人材を取り巻く環境整備が進んでおり、制度面では、営業機密などの産業データ、個人情報ともに法環境が整ってきているようだ。政府の教育施策としては、内閣府の「AI戦略2019」を受けて小中高の学習指導要領を改訂したほか、大学でもデータ・サイエンス学部・大学院の設置など短期・中長期的な教育環境の変革に取組んでいる状況だ。
企業では、早急にデータ分析関連人材の体制を構築すべく、中途採用の動きが活発化しているものの、当該人材そのものが全般的に不足しているため社内のシステムエンジニアや理系人材を中心に、再教育としてのリカレント教育を通じて人材育成する動きが活発化しているようだ。「世界最下位」と言われた日本でも、ようやくデータ・サーエンティストの育成・確保に向けた動きが始まったようだ。レポートでは23年に14万1900万人体制と大きな伸びを予測している。(編集担当:久保田雄城)