東大、新型コロナ感染者数の急増の予兆を検知する数理モデルを構築

2021年04月08日 06:11

画・東大、新型コロナ感染者数の急増の予兆を検知する数理モデルを構築。

東大のグループが新型コロナ感染者数の急増の予兆を検知する数理モデルを構築

 新型コロナウィルス感染症の流行は第3波が十分収束する前に感染力を増した変異型の流入で既に第4波とも呼べる広がりを見せている。政府はこれまで2度の緊急事態宣言を発出するなど様々な対応を行ってきた。しかし、国民からは政府対応の「後手後手感」を批判する声も少なくない。新型ウィルス登場から1年以上が経過し、新型コロナも通常の風邪やインフルエンザと同じ季節性感染症であることはわかった。しかし、次々と現れる変異型によって未だ事前に流行の時期を予測することは難しいようだ。これに関し、東大等のグループが既知の感染者数データから感染流行が起こる前にその予兆を検出する数理モデルの開発に成功したと発表した。

 3月29日、東大の合原一幸博士(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構副機構長)らのグループが「新型コロナウィルス感染者数急増の予兆を検知するための数理データ解析手法」の構築に成功したことを発表している。発表資料によれば、新型コロナの感染者数の動態は特定の地域で同期的に感染者数が急増するという特徴を持つ。今回開発された数理モデルは、このような急増が発生する前に、その予兆を地域の感染者数データの動きから検知するものだ。

 新型コロナの流行は、例えば1都3県など特定の比較的広いエリアで同期的に発生する。このモデルではこの現象を地理的ネットワーク上での人流による相互作用ととらえ、感染者急増を「実効再生産数が1より小さい」状態から「1より大きい」状態への状態遷移として表現し、これにDNB(動的ネットワークバイオマーカー)理論を適応している。DNB理論とは合原博士が開発した個体疾患モデルだが、状態遷移が起こる直前の「信号の揺らぎの増大」を状態遷移の予兆として検出する理論だ。

 研究グループは本モデルを用いてシミュレーションを行い、関東地方、中国湖北省、西ヨーロッパ、アメリカの17州、韓国、イタリア本土などの現実のデータを用いて予兆の検出に成功している。例えば1都3県を含む関東地方のシミュレーションでは、第1波は昨年3月22日、第2波は6月9日、第3波は10月31日が予兆検出日となっている。

 発表資料では「本手法により、感染者数が急増する流行の大きな波の予兆を早期警戒信号として検知することで、流行が実際に発生する前に諸対策を計画し先制的に実行出来る可能性が拓かれた」としている。(編集担当:久保田雄城)