中国経済の回復とこれに誘発されたアジア経済の好調を受けて日本の製造業も回復基調で推移している。また、ウイズコロナへの適応からIT投資や物流関連なども好調で日本のマクロ経済は緩やかながら持ち直している。こうした背景を受けて2021年度の賃金動向も持ち直しの動きとなりそうだ。
4月19日、東京商工リサーチが「2021年度、賃上げアンケート調査」の結果レポートを公表している。コロナ禍が2年目に入り、厳しい業績が続いているが21年度に賃上げを実施する企業は66.0%で前年度を8.5ポイントと大きく上回っている。前年度はコロナ禍の影響を大きく受け57.5%という低水準を記録したが、今年度の賃上げは前年度からの反動という側面も少なくない。官製春闘とも呼ばれたコロナ前の水準は80%超えであったから、未だそれより10ポイント以上低い水準ではある。
規模別に見ると、賃上げ実施企業の割合は大企業で74.1%、中小企業では64.8%と10ポイント近い規模格差がある。産業別に「実施する」と回答した企業の割合を見ると、製造業が71.9%と最も多く、次いで建設業67.4%、卸売業66.9%、運輸業65.8%、情報通信業62.7%と続いている。逆に、最低は不動産業の46.2%となっている。規模別で見ると、大企業では建設業、製造業、卸売業、運輸業で70%を超えている一方、中小企業で70%を超えたのは製造業だけで、製造業での好調が目立つ。コロナの影響が直撃した宿泊業や旅行業、飲食業などを含むサービス業他では、大企業が65.6%に対し、中小企業は58.4%となっており、やはり規模格差が鮮明だ。
賃上げの内容については、「定期昇給」が83.6%で最も多く、次いで「ベースアップ」の28.7%、「賞与の増額」22.4%と続いている。定期昇給が主で、ベースアップは3割未満だ。年換算ベースの賃上げ率では、最多は「2%以上3%未満」の26.6%、次いで「1%以上2%未満」の24.0%と続き、中央値は全企業で2.1%、大企業で2.0%、中小企業で2.3%となっている。
レポートでは「経済活動が本格回復を迎えた場合、人手不足の顕在化が懸念されている」とコロナ後を見据えた賃上げ圧力を指摘した上で「コロナ禍での各種支援策の副作用で過剰債務に陥った企業と、財務余力を残した企業の差が鮮明になりつつある。無理した賃上げは体力を余計に削ぎかねず、賃上げの状況を見守ることが必要だ」としている。(編集担当:久保田雄城)