「コロナとの戦いに世界中の人が全力を尽くさないといけない時に、背を向ける動きがある。残念ながら東京オリンピック。東京オリンピックはコロナとの戦いを妨害することになりかねない」。「開催でオリンピック株が出れば『100年にわたり人類の大きな愚行であった』と非難される」。強い危機感を医師が世界へアピール。
全国勤務医らでつくる全国医師ユニオン代表の植山直人医師が27日、日本外国特派員協会で記者会見し、開催強行を変えない日本政府と国際オリンピック委員会(IOC)、東京五輪パラリンピック組織委員会そして東京都に強く抗議、開催による新たな変異種(東京オリンピック株)の発生を危惧し、警鐘を鳴らした。「国際社会が中止へ動く時です」と呼び掛けた。
植山医師は五輪開催に犠牲が出ても仕方がないと開催を強行しようとする人たちがいるとして「これはウイルスと人との戦いではなく、人と人との戦いになるので、国際社会がこれを止める必要がある」と訴えた。
植山医師は「オリンピックでは約200の国から数万人の人々が東京に集まる。色んな変異株が東京に集中する、非常に危険な大会になりかねない」と指摘。
「南アフリカ株やインド株が世界に広がる可能性がある。まったく新しい変異株ができる可能性も否定できない。ワクチン効果を著しく下げるウイルスや子どもへの感染が容易になるようなウイルスが現れれば日本国内の問題というより、世界、人類の問題になる」と人類史上とんでもない禍根を残す五輪大会になりかねない可能性に言及した。
そのうえで植山氏は「そのようなことになれば『東京オリンピック株』と呼ばれ、この先、100年にわたって『人類の大きな愚行であった』と非難されることになる」と語った。「人間の理性が問われている」とも訴えた。この声が世界、IOC、日本政府、大会組織委、東京都に届くことを切に願う。
植山医師の会見内容を長く記述した。内容が的を射たものと共感できるからだ。一方、政府の対応はひどい。菅義偉総理は27日の「日EU定期首脳協議」で五輪開催へ決意を示し、賛同を求めた。加藤勝信官房長官は28日の記者会見で、緊急事態宣言下での開催は可能と思うかとの記者団の問いに「五輪のあるなしにかかわらず、感染抑制、医療提供体制の確保に努めていくことが一番大事」などと開催是非回答を逃げた。発言からは認識の甘さと国民や世界の選手に対する無責任さを露呈した。感染抑制に努めるのは当然で、これまでの対応の甘さが今日の『第4波』を招いているとの自覚と責任感がなさすぎる。
政府の無責任さは政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長の指摘に対する反応にもみられる。尾身会長は衆院厚生労働委員会で、パブリックビューイングなど大会関連イベントで人流増が懸念されると指摘した。東京都が代々木公園などで大規模な施設準備を進めている。
これに政府として都に働きかけるべきではないのかとの指摘に、加藤官房長官は「東京都やライブサイトの主催者において、いろいろ判断されていくと思う」と他人事だ。
さらに愚行としか言えないのが、東京都の『学校連携観戦』。都内81万人の公立の小中高の児童・生徒を五輪・パラリンピック観戦に動員する。
平時なら意味もあり、歓迎もされようが、コロナ禍で、イギリス株、インド株とこれまでのウイルスより感染力が強く、年齢に関係なく感染リスクが高い中で、地下鉄を利用して会場へ行けば、道中で「密」状態が避けられない。競技会場での感染防止策よりも難しいだろう。
学校はマスク着用、手指消毒、不要不急の外出抑制に加え『黙食』も児童らに求めている。感染防止のため、諸々強いている中で、五輪・パラリンピックだけは例外か。熱中症も危惧される。
運動会や修学旅行も中止や縮小になっている。ネット上では「五輪が悪辣にさえ思えます」「観戦行事が組まれていて驚きました。こんなことするより、(学校で)運動会を開いてあげた方が心に残るし、リスクも少ないと思います」「IOCも金儲けだけの組織だ」との声や「子どもたちの楽しみや夢を守るために、俺たち大人がやりたいことを我慢するんだよ」との書き込みもある。IOCや組織委員会、菅総理や与党議員はこんな声には「耳をふさいでいるようだ」。「国際社会が中止へ動く時」。植山医師の言葉が世界を動かすことを願う。(編集担当:森高龍二)