新型コロナのパンデミックの中、世界中で在宅ワークやオンラインによるコミュニケーションが急速に拡大した。こうした状況の中ではオンライン環境の設置や操作を自分自身で行わなければならず、個々人のデジタル・スキルのレベルが試されることになったと言っても良い。かねてから日本人のデジタル・スキルの低さは問題視されてきたが、コロナ禍でこれが浮き彫りになった。こうした日本人のデジタル・スキルの低さの背景には、日本人のデジタル軽視と学習意欲の低さがあるようだ。
5月26日イギリスに本部を置くPwCコンサルティングの日本法人が「デジタル環境変化に関する意識調査:2021年版(日本の調査結果分析)」の結果レポートを公表している。この調査は、世界19カ国の約3万2500名を対象に新型コロナの影響で加速するデジタル化が自分の仕事環境に与える影響に関しての認識を調査したものだ。
これによれば、新しいスキルやテクノロジーの習得について「絶えず新しいスキルを学んでいる」と回答した者の割合はグローバル全体では74%と7割を超えているのに対して、日本の回答者では40%にとどまり、日本では新しいスキルやテクノロジーに対する関心や意識・意欲が諸外国に比べて極端に低く、スキルの習得が著しく遅れている実態が明らかとなった。
「過去12カ月間に、どのような方法で新しいスキルを学習したか」という質問に対しては、「仕事を通じた学習」がグローバル全体では46%であるのに対して日本では23%。「無料のオンライン・リソース」はグローバルが40%、日本20%。「会社が提供する研修」ではグローバルが30%、日本12%などと、いずれでも日本で著しく低く、日本でのデジタル・スキル軽視、意欲の低さが鮮明となっている。「自分がデジタル・スキルを持っているか」と自己評価させた結果では、肯定的答えがグローバルでは70%に対して日本では38%と大きな格差が存在する。特に目立ったスキル格差は「STEM(科学、技術、工学、数学)スキル」で、グローバルが55%、日本は28%だ。
レポートは、DX進展の中で日本は「本来そのテクノロジーのユーザーとなる従業員の啓発が圧倒的に遅れている。自動化やテクノロジーよりも、この状況こそが、日本企業にとって一番の脅威」であるとスキルの低さこそが日本企業にとっての脅威であると指摘している。(編集担当:久保田雄城)