「チェーン展開する大手居酒屋の店舗撤退が止まらない」。市場調査業の大手、東京商工リサーチがコロナ禍1年での大手居酒屋チェーンの店舗撤退状況のレポートを公表した。コロナ以前より飲食業界は深刻な人手不足の状況が長く続いており、店舗オペレーションも円滑に行えない状況であった。そこに2020年初頭からの新型コロナ感染症の影響で、一転、客足を失う深刻な状況に陥った。飲食業の中でも主に酒類を提供する居酒屋・バーへの痛手は他の飲食業態よりはるかに大きなものであることは容易に想像がつくが、コロナ禍で居酒屋チェーンの持続的な店舗撤退が続いているようだ。
7月8日に公表された東京商工リサーチの「大手居酒屋チェーン店舗数調査」の結果レポートによれば、居酒屋・バーを運営する上場主要14社の21年3月末における店舗数は合計6152店、新型コロナ流行前の19年12月末は7200店であったので、コロナ禍1年余で1048店減少したことになり、率にすると14.5%の大幅な減少だ。減少の推移を見ると、19年末に7200店であったものが昨年4月の1回目の緊急事態宣言解除後の6月末には6646店と554店舗、7.6%の大幅な減少となっており、早期のこの時期に一気に撤退が進んでいる。その後は、9月末には6479店、12月末は6323店、21年3月には6152店と四半期ごとに100~200店のペースで閉店が続いている状況だ。
企業別に大幅な撤退をしたケースを見ると、「金の蔵」などを運営する三光マーケティングフーズが108店から51店へと52.7%の減少で最も大きいが、当社はコロナ前より大幅な撤退を行っていた。次いで、JFLAホールディングスが843店から556店で、34.0%の減少。ダイヤモンドダイニングの親会社・DDHDの435店から321店、26.2%の減少の順となっている。
一部の居酒屋チェーンは唐揚げ専門店やハンバーガー店など、従来の居酒屋業態のほかに、新たな業態へ資源を投入し業績の回復を試みている。7月12日以降、東京都に再度の緊急事態宣言は発出され、酒類提供の店舗を取り巻く経営環境の先行きは不透明さを増し、業績回復の見通しがたたない状況で、居酒屋業態の回復はさらに時間を要しそうだ。当面は、大手居酒屋チェーンをはじめ酒類提供を伴う店舗の減少は持続するとみられ、本年末には大手チェーンの店舗数は5000店台半ばまで減少する可能性もあるとレポートでは見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)