コロナ禍かつ景気後退局面の谷底であった2020年度、企業倒産件数は前年度に比べ大幅に減少した。この背景にはコロナ禍での各種支援策が功を奏していると言われる。全体として倒産件数は抑制されているというものの業種によってバラツキは大きく、コロナの影響による需要減が直撃した飲食や観光業、アパレルなどでは深刻な状況が続いている。1年以上にわたり繰りかえされる宣言による時短や休業によって飲食店の資金繰り状況は極限状態にある。飲食店の中でも業態により状況は多様だが酒類の提供が出来なくなった居酒屋などの酒場・バーの状況は特に深刻なようだ。
6月7日、東京商工リサーチが「飲食業の倒産動向調査(2021年1-5月)」の集計レポートを発表しているが、これによれば年初から5月末までの負債額1000万円以上の飲食業倒産は270件で前年同期と比べると15.6%の減少となっており、年間最多842件を記録した昨年と比べ、飲食業の倒産は抑制されている。レポートではこれを給付金や協力金などの支援効果によるものと見ている。ただし、これらの倒産のうち新型コロナ関連は123件と全体の45.5%と約半数を占めており、コロナ禍が長期化し、宣言や規制強化が繰りかえされる中で、時間の経過とともにコロナ禍の影響が事業継続に深刻な影響を与え始めているようだ。
宣言やまん防下では飲食店に対して休業や時短営業、さらに酒類提供の停止等が要請されているが、酒類が売上の多くを占める居酒屋などの「酒場・ビヤホール」では倒産が69件発生しており、うち新型コロナ関連倒産は43件と全体の62.3%、6割超を占めている。居酒屋に限らず多くの飲食店では、粗利幅の大きい酒類の提供が制限され、客足が遠のくばかりでなく、客単価も低下し、売上の大幅な落ち込みに直結し、極めて厳しい状況に置かれており、酒類提供の禁止でトドメを指された店舗も少なくない。
飲食店は初期投資や人件費も含む固定費が比較的少額でよく、このため創業資本の小さい小規模・零細規模の企業が多い。それはまた経営体力がぜい弱な企業も多いと言うことを意味する。持続化給付金などで一時的に資金繰りをつなぎ救済された事業者も少なくないが、長引くコロナ禍で宣言やまん防などによる営業規制が継続しており、常連客離れも含む経営体力の疲弊は確実に進んでおり、今後は息切れ倒産、あきらめ廃業の増勢への懸念が強まっている。(編集担当:久保田雄城)