次世代の車、EV(電動自動車)に必要なのは車体の軽量化だ。そこで注目されている新素材が樹脂に強化材として炭素繊維を混ぜたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)である。ボディフレームやフードなどにCFRPを用いることで約30%の軽量化が実現でき20%超の燃費低減につながるとされる。CFRPはすでにボンネットフードやプロペラシャフト、バックドアなどに用いられているが、トヨタ・レクサスLFAやBMW・i3などで積極的にボディ系に採用されている。しかし、加工法の課題も多く、それ故に未だコスト面で課題が残っている。
7月16日、矢野経済研究所が車載用CFRPの世界市場調査の結果レポートを公表している。これによれば、2020年における車載用CFRPの世界市場は、新型コロナ感染拡大の影響を受けて自動車生産台数自体が落ち込んだ関係で、前年比93.9%の1160億4900万円と推計され、これまで順調に拡大してきた車載用CFRP市場も前年割れとなっている。21年は自動車生産の持ち直しに合わせ回復基調となっているもののコロナ以前の19年の1235億3600万円には達しない見込みだ。
20年のエリア別の動向を重量ベースの構成比で見ると、欧州が57.7%で先行しており、北米が21.4%、日本は11.4%、その他9.5%と推計されている。欧州にはBMWをはじめ、LamborghiniやFerrariなどCFRPを積極的に採用している自動車メーカーが数多く存在し、車載用CFRPの最大の市場となっている。一方、米国ではビック3が軽量化素材としてアルミニウムの採用を中心としているが、GMCなどCFRP部品の搭載車種も着実に増えており市場は緩やかに拡大傾向の模様だ。日本においては、「プリウスPHV」や「レクサスLC」へのCFRPの適用が注目を集めた。
これまで自動車メーカーはCASE対応のための技術開発を主軸としてきたが、今後はEV本格化に向け軽量化が主要な課題となることを見据え、CFRPの成形法をはじめ、構造設計や材料開発などに取り組み出している。電動化加速のためには車両の軽量化は不可避であり、今後は車載用CFRPの適用は拡大傾向で推移すると期待される。課題は加工法とコストだが、今後はRTM成形品が牽引、SMCなどプレス成形品の採用も拡大すると見込まれる。
こうした見込みを背景にレポートでは20年から30年までの車載用CFRP世界市場のCAGR(年平均成長率)を6.46%とし、30年の市場規模は2169億9200万円に達するものと予測している。(編集担当:久保田雄城)