コロナ禍が長期化している。新型コロナウイルス感染症の流行によって真っ先に打撃を受けたのは観光業だ。日本のインバウンド戦略は計画を上回る実績で高成長をとげてきた。この分野に対する先行投資も多額に上り、景気回復を牽引する材料の一つであったことは間違いない。しかし、新型コロナの流行によって需要蒸発ともいえる深刻な事態に一変した。昨年一杯までは政府の支援策も功を奏し、コロナの悪影響のインパクトに比べれば観光業関連倒産も低水準で推移してきた。しかし、コロナ禍1年以上が経過し支援策の効果も薄れだし、旅行業では売上回復の見通しがつかない状況で息切れ倒産が増勢を強めている。
8月10日に東京商工リサーチが2021年の1月から7月までの旅行業の倒産状況についてレポートを発表しているが、これによれば、7月までの負債1000万円以上の旅行業倒産件数は累計19件で、前年同期と比べ11.7%の増加と2桁の増加となっている。旅行業全体としては3年連続の増加であるが、19件のうち新型コロナ関連の倒産は17件で構成比は89.4%と約9割を占めるに至っている。20年の2月から12月では旅行業倒産23件のうちコロナ関連倒産は7件と3割にとどまっていたが、コロナ禍の長期化の中でコロナ関連支援の効果も薄まり、需要回復が全く見通せない状況でコロナの影響が深刻さを増し、小規模事業者を中心に息切れ型の倒産が増勢を強めているようだ。
負債額については18億4700万円で、昨年6月に負債278億円の大型倒産が発生しているため前年比では93.6%の反動的減少となっている。本年は負債1億円未満の小規模倒産が89.4%と約9割を占め、従業員規模別では5人未満が16件で最多となっており、前年同期と比べ60.0%の増加、構成比84.2%を占め、小規模業者での倒産が勢いを増している。原因別でみると「販売不振」16件が最多で、前年同期と比べ23.0%の増加、構成比は84.2%と全体の8割超となっており、やはり需要回復の見通しが立たないことが倒産の増勢に直結しているようだ。
レポートは「小規模業者には経営体力に乏しく、海外旅行に特化した業者が含まれ、コロナ禍の長期化に耐えられなくなった倒産が増えている」と分析しており、インバウンド需要蒸発の長期化がジワジワと小規模破綻を増勢させているようだ。(編集担当:久保田雄城)