テクノロジーの急速な進化に伴って労働市場の流動化が求められている。こうした中で多様な人材を確保する観点から副業を容認する企業も増えている。政府も働き方改革の一環として副業の奨励を行っている。しかし、これまでに副業を禁止していた理由である情報漏洩や過重労働など副業に伴うリスクは依然存在し、こうしたリスクを回避する労務管理体制の整備が制度普及のためには不可欠だ。
パーソル総合研究所が今年3月上旬に「第二回・副業の実態・意識に関する定量調査」を実施し、8月11日に企業の労務担当者1500人を対象とした「企業編」の調査結果を公表している。これによれば、副業を容認している企業の割合は、「全面容認」が23.7%、「条件付容認」が31.3%、両者の合計は55.0%となり、2018年の前回調査51.2%と比べ3.8ポイントの増加となっており、緩やかではあるが副業制度は広がりを見せているようだ。
容認理由については、「従業員の収入補填のため」34.3%が最も多く、「禁止すべきものではないので」26.9%、「個人の自由なので」26.2%と続いている。逆に禁止理由は、「自社の業務に専念してもらいたい」49.7%と約半数でトップ、「疲労による業務効率の低下の懸念」42.1%、「過重労働につながる」39.7%、「情報漏洩リスクがある」29.5%と従来の副業禁止理由が上位を占め、また「労務管理が繁雑となる」20.4%など管理体制が整備されていないことも理由として挙げられている。
副業者の受入れについては、「多様な人材確保(26.4%)」や「高度スキル人材確保(22.6%)」などを理由に「受入れ意向」も含め47.8%と半数近くが受け入れ容認となっている。受け入れに伴う課題は、「労務管理が煩雑」12.0%、「ノウハウ等の流出」8.7%、「情報漏洩」7.8などとなっており、やはり副業者を受入れる際のリスク・労務管理体制の整備が問題点・課題として挙げられている。
レポートの分析では労務担当者が重視している点は「本業へのプラス効果」、「人材流出」などであるとされており、本業へのプラス効果を生み出し、人材流出リスクを減らすためには企業の副業者への積極的支援が重要と指摘されている。しかし、副業者への支援を「特に行っていない」企業は52.3%と過半数を超えており、「組織マネジメントのあり方を見直すこと」が副業制度を推進する上での課題となっていると言える。(編集担当:久保田雄城)